Trauer 04 ページ5
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「おい、お前大丈夫か?」
「あ、はい」
そう言って差し伸べてもらった手を借りて立ち上がる。
__つもりだった。
転んだことと、逃走していたことに耐えられず立ち上がれなかった人間が手を借りただけで立てるようになるわけもなく。
前方によろけて、また地面とぶつかる。
と、身構えてみたものの軽い衝撃だけで特に怪我が増えるような痛みは訪れない。
不思議に思い顔を上げると、黒髪の人の腕で受け止められていた。
さっきまでこの人と口論していた女性が近づいてきて、ぎょっと目を向かれる。
「うわ、派手に転んだわね?」
「あ、あはは…………」
思わず口からは乾いた笑みがこぼれる。
誰だって転びたくて転んでる人間はいない。
静かだなと思っていたら、黒髪の人は私を軽々と抱き上げて歩き出した。
下ろしてもらおうしてと少し暴れてしまったが、「落ちるからやめておけ」と言われれば大人しくするほかない。
「ここからなら、支部の方が近い。そっちで手当てする」
「そうね、話も聞かないとだしね」
私はやましいことなどないので抵抗する必要もないのだが、なされるがままに彼らに強制連行されることになった。
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作者名:猫鞠 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=neconuco
作成日時:2021年3月7日 1時