【ワールドトリガー】愛惜のシックザール (ページ39)

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Trauer 38 ページ39

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「ここに、いていいんですよ」

「──え？」

「居ちゃいけないなら、とっくに追い出されているはずです。だから、此処にいていいと、いてほしいとみんな思っているんですよ」

少なくとも、私はその言葉が救いだった。

そうやって差し伸べられた手だけは、受け入れられたから。

そうなればいいと願いを込めて。

それでも迷うように目をさまよわせる五月女先輩に、今まで黙っていた美桜さんが口を開いた。

「ねぇ桐也。私達ね、隊長をAにしようかって話してたの」

「──は？」

本当に意味が分からない、というような、それがどうしたのかとでも言いたげな顔になる五月女先輩に、笑って告げた。

というか、私も聞いてないです。

でもまぁ、五月女先輩には笑っててほしいと思ったのは確かだ。

「隊長を任せることで、此処が桐也の居場所になればいいと思ったけどそれで負担になるなら別の人間がやればいい。
　でも、私も凌も熱が入ると全然指揮とかに目がいかなくなっててんてこ舞いになっちゃうから……」

「それで、私ですか…………」

「アンタならできると思うし、私と凌はアンタの命令か桐也の命令以外聞く気がないって思ったの」

私達のどっちかがやっても、命令だと喧嘩するから互いに単独で合理的な行動取ってやる方が効率良いから指揮も何もないしね。なんて笑う美桜さんに、思わず「えぇ…………」と呆れたような声が漏れた。

「ねぇ、桐也。こんな仲間思いな隊長さんなんてこの子らしくもあって、伊織さんみたいでしょ？」

「──っ！」

優しい美桜さんの笑顔に、五月女先輩の戸惑うような後悔するような感情の瞳が揺れる。

私は五月女先輩にとって最高の隊長であろう「伊織さん」になる必要はないだろうし、なるつもりもない。

だから。

「私は、私らしい隊長をします。そのうえで五月女桐也さん、鳥羽隊に入ってください」

お願いします、そう頭を下げた。

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