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Trauer 37 ページ38

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--side You--



「A! 桐也!」



訓練室を出るとそう言って、駆け寄ってくる美桜先輩が見えた。

トリガーを使った私闘ではなく、訓練にあたるのでとりあえずお咎めはないはずだ。


隣に無言で立つ、先輩に声をかける。



「五月女先輩」



ピクリと反応を示しただけで、うんともすんとも言わないが荒治療ということで許してほしい。



「伊織さんも、羽島さんも貴方に生きてほしかっただけだと思いますよ」


「それ、でも…………」



生きてほしかったとでも願うような、切実な思い。

この世界は想うよりも残酷で、酷いものだと私も思う。


でも、生きてほしいと願う人が居るから。

願った人の為に生きるのが、残された私たちに出来る恩返しの筈だ。


──少なくとも、私はそう信じている。



「貴方が彼らに生きていてほしかったと願うように、彼らもそう思ってたはずです。
 私はよく知りませんが、美桜先輩のお姉さんも凌先輩のお兄さんもそう思っていた思いますよ」


「…………」


「美桜先輩や凌先輩だって、“あなた”に生きてほしいと願っているんですよ」



彼の息を呑む音が聞こえた。

きっとこの人は、ずっと亡くなった「羽島隊」の全員と、その遺族の思いを抱えていたのだろう。


──どうして自分が守られて大切な人が死んでしまったのか。

──他の人にとっても大切な人を、奪ってしまった。


そんな後悔と、絶望。

奪ってしまったという、申し訳なさで自分を責め立てていくそんな苦しみ。


かつて私も体験した、身に覚えのある感情だ。

母と弟が死んだときは悲しみよりも後悔が先立ち、どうして自分が生きているのか分からなくなった。


誰かから直接的に責められたわけじゃない。

それでも、自分が許せなくて窒息するような__そんな感覚。




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作者名:猫鞠 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=neconuco  
作成日時:2021年3月7日 1時

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