Trauer 34 ページ35
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「過去に所属していた隊の人を亡くしているそうですね」
「…………だから、隊からは離れた」
その言葉には諦めと、出来ないというような意固地になった感情が籠っていた。
あぁ、この人にも託されているはずの未来を、過去の傷が今も痛むから現実から託されたことから目を背けている。
痛いから、出来ないと自分をごまかして傷と向き合おうとしない。
「彼らからあなたは未来を、今を望まれたと思いますが?」
「逃げるだけの俺が、受け取る資格はない」
なんて、残酷なんだろうか。
「羽島伊織」と「羽島大智」という、友人とその友人の父にして師であるその人の願いを踏みにじるなんて。
──なんて羨ましい。
私なんか、願いを託されすらしなかったのに。
最後に何を思っていたのか何も分からないのに。
「
なんて惨い。
「…………私と戦ってください」
「……は?」
彼の師は、彼の友人は私の父と兄だから。
この人が兄弟弟子だというなら、私は前を向かせる。
何も託されなかった私でも、そうするべきと思ったから。
彼らが生きるべきだと思って命を人間が、彼らを思って自ら生を放棄するなんて。
あまりにも彼らを侮辱している。
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備考欄(NEW!)
「羽島伊織」=「鳥羽伊織」……?
「羽島大智」=「鳥羽大智」……?
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作者名:猫鞠 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=neconuco
作成日時:2021年3月7日 1時