Trauer 30 ページ31
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──Side:Main──
──あったかい。
最初に思ったのはそんなことだった。
温かくて、誰かに抱きしめられている感覚があったのに、寝起きの脳は正常に働いてくれない。
こんな風に抱きしめられるなんて、三年前が懐かしくて。
──まだ寝ていたいな…………
微睡みに浸った脳みそはそんな判断しか下してくれなかったが次の瞬間、思いきり目が覚めることになるとは思いもしなかった。
「にしても、二宮さんとその子が従姉妹だったとは」
「……意外です」
「そうか?」
「意外というか…………」
そんなことしてる二宮さん自体が、とさっきとは違う女の人の声が遠くない場所から聞こえる。
二宮という単語に、匡貴くんのことかな? とあたりをつけて自分が眠る前に彼に泣きついたことを思い出す。
──ということはつまり、この温もりは…………
恐る恐る目を開けると当然というべきか、匡貴くんの服が飛び込んできた。
これは…………。
意を決して見上げると。
「…………」
身じろぎをしたせいで、こちらを見た匡貴くんと思いっきり目が合った。
不安になって泣き疲れて眠るとか、どれだけ子供なんだと恥ずかしくなる。
「…………ごめん、なさい」
「……気にしなくていい」
その言葉が無性に痛かったけれど。
そんな子供っぽいことをした私が悪いので甘んじて受け入れることにした。
「あ、私は鳩原未来、よろしくね」
「鳥羽Aです」
「こっちの女子に免疫のない子は辻新之助くんで、あそこに座ってるのがオペレーターの氷見亜希ちゃんだよ」
「あ、えっと…………よろしく」
「よろしく」
照れた様子で困っているのは、免疫がないせいだというけど、ここ氷見先輩と鳩原先輩どっちも女子だけど大丈夫なのかと少しだけ心配になるが多分大丈夫なのだろう。
氷見先輩は少し緊張しているようだったけど、涼しい顔だ。
ここは比較的大人しい人の集まりなのかもしれないと、そう思った。
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作者名:猫鞠 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=neconuco
作成日時:2021年3月7日 1時