Trauer 29 ページ30
──Side:not change──
ただこいつが泣き止むまで、と思っていたのだが。
(寝たか…………)
健やかな寝息を立てて、すっかり寝入っていた。
泣き腫らした目元が赤く、少しだけ痛々しい。
泣き疲れて眠るなんて、ガキだな……と思うが俺も大人ではなく
俺と五つ以上年の離れたこいつが、いくら大人びていようと所詮はまだまだ大人の庇護下にあるべき対象の子供なんだとまざまざと見せつけられた気がした。
親友であり、従姉妹であったコイツの兄──鳥羽 伊織が死んで何年経っただろうか。
随分前の出来事にも思えるが当時の俺が中学3年生だったことを考えれば、まだあれから三年くらいしか経っていないのだと知る。
そして一年という月日が流れるよりも早くこいつは家族を、血の繋がった肉親を全員亡くしたことも。
侵攻が起こる数年どころか数か月前に父と兄を亡くしたAは、侵攻で更に母と弟を亡くした。
それがあの時まだ十歳程の子供だったこいつに降りかかっていた精神的ダメージは計り知れない。
まだ失った痛みに囚われているのかも知れないな、と目を逸らした。
(こいつは、あいつの忘れ形見みたいなものだからな…………)
「あれ、二宮さん?」
ふと足音の方を向くと、私服の犬飼が立っていた。
今日の防衛任務はうちの隊じゃないのもあって、個人戦だの正式入隊日でいい新人がいないか見に来ただけだろう。
医務室の前を通った理由は疑問だが。
「こんな所でなにして……って、あぁ__用ってその子の検査です?」
「あぁ、副作用持ちだったらしい」
「へぇ…………。トリオン量多くても大変そうですね」
こいつはへらへらとしているが、場の空気が重くならないようにという配慮があるのと、単純にそういう気性なのだろう。
「……泣き虫には荷が重いだろうな」
親友に託された彼の妹に対して、この世界は随分手酷いな__とそう思った。
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主人公の兄で主人公が小2の時に小6だったくらい離れている。
つまりは二宮とは同い年の従姉弟であり、親友でもあった模様。
本編の三年ほど前に父親と共に亡くなっている。
暫く離れていたお詫びの二話投稿(多分今回だけ)です
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作者名:猫鞠 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=neconuco
作成日時:2021年3月7日 1時