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Trauer 27 [一寸先は] ページ28

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「このトリオン量から見ても、副作用で間違いないだろうね。ランクはSで『万里眼』かな。超直感と千里眼みたいなのもあるみたいだし」


「はい」


「また困ったことがあったらいつでもおいで」


「ありがとうございました」



そう言って退室して、医務室の前の椅子に力抜けたように座り込んだ。


──副作用だと診断されると思ってなかった。


よく勘が当たるなー、まあただの勘でしょくらいにしか思ってなかったのに。

急にそれが「あなたの超能力です」と言われても、いまいちピンと来ない。

なるほどそうか、としか。


――違う。

本当はわかっていた。

そんなこと、この外れることはない勘が化け物じみた人外だと言わんばかりの品物だなんて。


怖い。

外れない、この勘が怖い。

私は、この勘がいつか全てを察してしまうのだと、ただの超直感で無くなるのだと「超直感」が告げる。

そうなってしまったら、私が背負うモノは。


数多の未来と手を差し伸べられなかった命。


――考えるだけで、ゾッとした。



「……」


「……ぁ」



私の手よりも、一回りも二回りも大きな手が私の手を包み込んだ。

あったかい匡貴くんの手に握られて、ようやく自分の手が震えていたことに気づいた。

指先まで冷え切っていたことにも。



「ご、ごめんね? しゃんとしなきゃいけないのに」



そう謝ったのが失敗だったのか分からないが、彼は顔を歪めてため息をついた。

そんなつもりじゃなかった、そんな顔をさせたかったわけじゃ……と誰にいうわけでもない言い訳がぐるぐると頭を回る。



「吐け。全部」


「……怖いの。遠くないうちに大概、全部、分かるようになるのが__怖い」



問いただされて、素直に言葉が溢れた。大丈夫って答えるつもりだったのに、代わりに出たのは不安。

何でもない元気な声を出したかったのに、出たのは情けなく震えた声。

自分の弱さを否定されたくなくて返事を聞くのが怖くて、俯く。


でも気づけば、ぽすりという感覚とともに匡貴くんの腕のなかにいた。

まるで、お母さんと弟のお葬式の日みたいに。

あの日と同じで思うよりも、ずっとあったかくて、なぜだか泣きたくなる。



「落ち着くまで、こうしていてやる」



その言葉が、無性に有難かった。




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作者名:猫鞠 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=neconuco  
作成日時:2021年3月7日 1時

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