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数日前、伊野尾がおきたその日。
あの日は何故すぐにナースコールを押さなかったのか、と看護師一同にお叱りを受け、夜遅かったが故に翌日に検査が回されることとなった。
伊野尾が起きたのだから、山田だってすぐに起きるだろう。
そうだと皆んなで確信し、喜びに浸ったのが数日前。

いまだに山田が目覚める気配はない。
数値としては至って健康でいつ起きてもおかしくない状況であるというのにその綺麗な瞳を格納する瞼が動くことはなかった。

その間、俺たちにもいくつかの情報が入っていた。

伊野尾に関しては腕の骨折と頭の強打、細かな打撲等の外傷。それだけであることが改めて検査で発覚。
骨折は全治二ヶ月。それが治ったら退院していいとのこと
トラックに轢かれたとは思えないくらいの怪我で医者も驚いていた。

それに伴い、現在俺だけが知っている情報が一つ。
伊野尾がトラックに対し生活に支障が出るレベルで恐怖を抱いている。
通常速度であれば問題ないのだがある程度の速度異常に達すると震えが止まらなくなる。
当の本人は隠そうとしていたが、仕事に支障が出た時のために、と情報を共有してくれた。
ただし、他メンバーに話すと俺含む全員と絶縁するそうでこれが本当だった場合えらいこっちゃである。
俺に話してくれたことだけは秘密主義の伊野尾にしては一歩前進である。

最後にもう一つ。
伊野尾と山田の事故がその場に居合わせた誰かによってネットに共有拡散されている。
ネットが身近になり情報の溢れるこの社会であるから当たり前といえばそうなのだ。
ファンの子達と思しきアカウントからも拡散されていて気持ちが曇った。
もし、これが当の本人たちに届くとしたら。その先のことは考えなかったのであろうか。
伊野尾がトラウマになるような映像がこの世に蔓延っている。
それを拡散しているのは一部のファンたち。
特に悪意はないのだろうが、それは俺たちの心を酷く苦しめた。

今日も仕事終わりに伊野尾のお見舞いと山田の顔を見に病院へ赴く。
この道のりに若干慣れ始めている自分が何故か悔しかった。

いつも通り六階までゆっくりと動くエレベーターに乗り移動する。
初めのころはあまりにゆったりとしているので苛立ちを覚えていた。
2度のノックでドアを開け中に入る。

「あのな、薮。ノック2回はトイレの時なんだよ。ここはトイレじゃない」

ノックの回数が一度少ないのはうっかりではない。
笑顔で俺に不満を垂れるこいつを見て安心したいだけなのだ。

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米山瑞稀(プロフ) - なにわ男子 (3月26日 20時) (レス) id: a504ed4635 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:悠璃 | 作成日時:2024年2月14日 20時

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