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俺が病院に到着した時にはすでに何人かのメンバーがそこにいた。
俺のように仕事から抜け出してきた人。
たまたまオフの日だった人。
仕事の都合上ここにこれていない人。
様々である。
赤いランプの前で涙ぐむ人やそれを宥める人。
三者三様なこの状況にふっとため息が落ちた。
「薮くん、山田ってどこにいるの」
「五階。511号室。」
「ありがとう。」
ランプの光に目が疲れ、もう一人この病院に運ばれた彼の元へと足を赴かせる。
山田の方は轢かれた訳ではないがそれでも意識不明。
彼の寝顔ひとつ見てからいのちゃんの方に戻ったって何も恨まれる事はない。
突き当たりにあったエレベーターに乗り込む。
ゆっくりと焦ったく動き俺の感情が微かに苛立ちに震えた。
味気のない飾られることのない真っ白な廊下を通り抜け薮くんのいっていた部屋へと足を進める。
511号室。山田涼介
綺麗な字で書かれたそれは非常に単調で軽そうなのに俺の心に深く沈み込んだ。
それはきっと彼が入院していることを俺にまじまじと突きつけてきたからであろう。
数回のノックと軽めの声をかけ向こうから返事は来なかったがその扉を大きく開けた。
少し前に某先輩主演のドラマに出させていただいた時に見たような装置が彼には繋がれていた。
人工呼吸器、その傍らには心電図モニタが置かれその存在を主張していた。
窓際に置かれたベットに横たわり眠る山田はその顔つきの良さを普段よりも感じさせられ絵画のようであった。
俺たちは腐ってもアイドル。
気を遣っていただいたのだろう。彼が眠っているのは幸運にも個室であった。
広々としたこの部屋を占拠する様子はあまりに殺風景で、眠る彼の絵画を飾る額縁かのように落ち着いた空間であった。
あいにくの雨であるが窓から溢れる微かな光が山田を照らす唯一のものであった。
側によれば見える彼の表情。
決して楽そうなものではない。かといって辛そうか、と聞かれればこれに対して俺が首を縦に振る事はない。
ただ寝ている。
この言葉に尽きるだろう。
近くのテーブルに置かれている彼の衣装と思しきものは濡れていて彼もまた雨に打たれたことが窺える。しかしながら彼の髪は濡れているようには見受けられず丁寧に乾かしてもらえたことが容易に想像できた。
頭を打った、と薮くんはいっていた。
その程度がどのようなものは想像の域から出る事はないが残酷な結果にならないことを今は祈るしかできない自分がひどく小さく感じた。
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米山瑞稀(プロフ) - なにわ男子 (3月26日 20時) (レス) id: a504ed4635 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠璃 | 作成日時:2024年2月14日 20時