検索窓
今日:66 hit、昨日:72 hit、合計:14,869 hit

23 ページ23

ym

楽屋にずっといる訳にもいかずどうにかして立ち上がり重い体を引き摺りながら帰路につき、普段の何十倍もの時間をかけて家にたどり着いた。
時計の針なんてもう何度回ったかもわからないほど時間がかかった。

俺が話を聞いたのは昨日のことだった。
個人の仕事をしている時にスタッフさんが話しているのを聞いてしまったのだ。

“山田さんって伊野尾さんのせいで頭強打したらしいのに元気そうだよね。”
“それな。なんで自分に怪我を負わせたやつと仲良くできるんだか。”

廊下の隅の方で二人で話していたらしいスタッフさんたち。
初めて聞いたその話は案外ネットで調べればすぐに出てきて確かに俺が“伊野尾ちゃん”に押し倒されて頭を打つ瞬間の映像が蔓延っていたのだ。
ニュースを漁れば“恨みがあったか?!”とか“怨念の行末、結末は犯罪紛い!!”とかの見出しがついたものだって転がっていた。

瞬間、俺の中で一つの結論に至った。

俺の頭痛の原因は頭を打った時に“伊野尾ちゃん”が俺を押し倒したからではないか、と。

そう考えれば大抵のことは説明がつく。
俺の頭痛はその時がフラッシュバックを起こして“伊野尾ちゃん”を拒絶して要るもので。
彼だけが俺に負の面を見せないのは犯罪紛いに頭を強打させたが彼との記憶が損なわれるだけで俺が死に至ることがなかったからで。

思い返せば整合性がとれてその通りだ、としか言いようがなくなっていた。

それでも彼がそんなことをする人だとは思えなくて確認しようとしたところ俺が頭を打った、と言った瞬間に彼の対応があからさまに変わった。

真実を突きつけられて苦しい、とでもいいたげに。


何もかもが嘘だと気づいて酷く悲しくなった。
何で私念なんかで俺が怪我をしなければならなかったのか。
意味がわからなかった。

重い体をベットに投げて今後のことを考える。
きっと現場ではいつも通りの俺たちを続けることになるだろう。
関係にヒビが入っていたとしてもそこだけは死守してくる。
記憶のない俺をうまく言葉で誘導していつものように見える方向に連れて行ってくれていた人だから。
俺が真実に気づこうとファンにそれを悟らせないようにするだろう。
自身の保身のために。

どこまでも狡猾な人なんだ。
意図せずしてもれたため息は行き場を失いしばしの間漂っているように思えた。

24→←22



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (49 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
155人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

米山瑞稀(プロフ) - なにわ男子 (3月26日 20時) (レス) id: a504ed4635 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:悠璃 | 作成日時:2024年2月14日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。