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「や、まだ?」

ポツリと聞こえたのは大ちゃんの声であろう。
ようやっと目を覚ました彼に優しく問いかけ、この状況が現実であるかを確かめているかのような。そんな声であった。

ゆっくりと持ち上げられ数秒かけて焦点を合わせ始めた山田の瞳はこの世のものとは思えないほどに美しく儚いものであった。

「りょうすけ、おはよう」

知念の声にゆっくりと首を縦に振り山田が頷いた。
全体的にゆったりとした動きではあったが、寝ていた上半身を起こし俺らと目線が同じ高さに持ってこられる。
順に頭を回し一人一人の顔を確認しそして微笑んだ。

それに俺たちが歓喜したのはいうまでもない。
それこそ、看護師さんに怒られるレベルで騒いだかもしれない。
各々が喜びに浸り、それを表現するなか、ただ一人の雲行きが陰っていった。

「どうした、いの」
「お前、俺のことわかる?」

俺の言葉を遮るようにして彼が告げたのは思いもよらぬ言葉だった。
しばし、伊野尾の言っている意味がわからずてっきりいつものテキトーかと思い茶化そうかとも思った。
だが彼らの雰囲気が本気であることを物語っており、俺たちが変にネタにしていいようなものではないことは明白である。
数秒の硬直のうち、悲しそうに笑った山田は確かにこう告げた。

「ごめんなさい。どちら様でしょうか」

総員が歓喜から絶望に変わったことであろう。
ただ二人、それを告げた山田本人と言われた伊野尾のみが仄かに笑みを浮かべている。
その笑みの根源は果たしてどこにあるのかは定かでない。
それでもなぜか本人同士では独特な空気が流れていたのだった。

「俺のこと知らないですよね。ごめんなさい。俺の友人の大切な人のお見舞いで一緒に来ただけです。俺はここらでお暇させていただきますね」

本来、メンバー同士でなら聞くことのない言葉の羅列。
それはまさに知らない人同士で分かち合うもので俺たちの間で使われるべきでないもの。
優しく微笑んだのちに席を立ち点滴を引きずりながら部屋を出る伊野尾。
思わず掴んだ彼の袖口は万力の力により振り解かれた。
果たしてそんな力普段どこに隠し持っていたのやら。

伊野尾が部屋を出てすぐに俺の携帯にメールが入っていた。

“俺は大丈夫だから。山田のそばにいてやって。俺に関することは言うなよ?ネットニュースも見せんなよ”

端的な内容には彼なりの配慮があって。
きっと今1番苦しい彼のそばにいてやりたいが近くにいけば阻まれる。
悔しい。唐突に思った。

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米山瑞稀(プロフ) - なにわ男子 (3月26日 20時) (レス) id: a504ed4635 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:悠璃 | 作成日時:2024年2月14日 20時

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