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黒Side


「向井康二」

「はいっ」


壇上で呼ばれた康二くんが返事をして
卒業証書を受け取り、階段を降りて行く。

その姿を目に焼き付け、卒業式を終えた。


「めめ、一緒に帰ろー」

「あ、ごめん。ちょっと康二くんとこ行ってくる」

「そう?じゃあ待ってるね」

「さんきゅラウール」


声を掛けてきたラウールに断りを入れて
急いで康二くんの教室へと走る。

もう何度この道を通ったか分からない。

でもそれも今日が最後なんだな…


「向井くんっ」

「ん?」

「あのっ…第二ボタン、くれませんか」


やっと康二くんの教室に着いたと思ったら、
康二くんは何人かの女子に囲まれていた。


「あぁ、えっと…」

「私も欲しい」

「えっ…」

「あたしもずっと好きだった…」

「ちょ…」

「私も向井が好き」

「あたしも康二が好き」


来なきゃよかった…。

もう誰もいない隣の教室に避難して深呼吸をする…

分かりきってたことじゃん。

康二くんがモテるなんて…

それなのに何で泣いてんの俺。

誰もいない三年生の教室の片隅で縮こまる自分は
どんなに惨めなんだろう…


「こんなとこにおったんか…」

「…っ」


体育座りをしたまま顔を上げると、
そこにいたのは会いたくて仕方がなかった人。


「康二くん…」

「探したんやで?教室行ったら俺に会いに行ったってラウに言われたし」

「ごめん、なさい…」

「ん。えぇよ」


そういうとぴたりと俺にくっついて、
康二くんも冷たい床に腰を下ろした。

ちらりと胸元を見ると、
さっきまではあったはずの第二ボタンが
消えていることに気付いて勝手に傷付く。


「もう…何年になるんやろうな。」

「?」

「めめと出会って」

「えっと…六年とかですかね」

「そっかぁ。なんか懐かしいなぁ」

「…」

「あのな、めめ」

「はい…」


名前を呼ばれて再び顔を上げると、
そこにはいつもみたいに優しい顔の康二くんはいなくて。

とても真剣な表情の、男らしい康二くんがいた。






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真夏野スピカ(プロフ) - かおりさん» パス外しました! (2020年12月14日 0時) (レス) id: ee0c14e74e (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - 楽しみにしてます!ありがとうございます! (2020年12月13日 19時) (レス) id: 471bec5651 (このIDを非表示/違反報告)
真夏野スピカ(プロフ) - テンプレ返信ごめんなさい… (2020年12月13日 18時) (レス) id: ee0c14e74e (このIDを非表示/違反報告)
真夏野スピカ(プロフ) - かおりさん» コメントありがとうございます!Part2は現在作成中のためパスを付けてるんです…。0時には開けるようにしますのでお待ちいただけたら幸いですm(__)m (2020年12月13日 18時) (レス) id: ee0c14e74e (このIDを非表示/違反報告)
真夏野スピカ(プロフ) - トマト鍋さん» コメントありがとうございます!Part2は現在作成中のためパスを付けてるんです…。0時には開けるようにしますのでお待ちいただけたら幸いですm(__)m (2020年12月13日 17時) (レス) id: ee0c14e74e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:真夏野スピカ | 作成日時:2020年11月13日 19時

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