第三十二話「王の選定」 ページ39
気だるげな表情で、おねえさんがキセルをふかした。
すると、巨大なお姉さんの前……わたしたちのいる一帯にむわぁ、と白い靄がかかった。
同時に、苦い煙のにおいが辺りを包んだ。
なんだか臭くて息苦しかった。
だけど、お日様がわたしの口と鼻を庇うみたいに。……そっと肩にうずめる形にしてくれた。
覇「ゲホゲホ」
――代わりに。
お日様の方が咳き込んでいた。
対照的に、紅炎様は能面の表情で、微動だにしなかった。
煙が少し収まってきて。
白い視界がだんだんはっきりしてきたら。
レ「よくもまぁ、こんな大勢で宝物庫に辿りつたな。数人くらい脱落者が出ると思っていたぞ」
大きなお姉さんが口を開いた。
泣きすぎたとき、喉がひりひり痛くなって、声が低くガラガラすることがある。
そんな感じのダミ声だった。
炎「……。お前がレラージュか」
レ「そうだ。私が第14迷宮(ダンジョン)『レラージュ』の主(ジン)、レラージュさ」
そう言って、再びお姉さんがキセルを吸う。
覇「御託はいいからさぁ、ジンは迷宮攻略者を王の器として選ぶんでしょ? 煙たくてかなわないからさ、はやく炎兄を選んでくれない?」
レ「……」
紅覇様は、おにいさん……紅炎様が王の器として選ばれると、信じて疑っていなかった。
レラージュはそんなお日様のはっきりとした口調を聞きながら、心はここにあらずといった表情で、「うーん」とどこか遠くを見る目をしていた。
しばらく、口の中で煙をころがして。
それから、プハァ〜と再び煙が吐き出された。
また視界が白くなって、お日様が咳をした。
その様子を見ながら、何故かレラージュはとめどなく涙を流していた。
だけど。……その涙の理由は良く分からなかった。
*
レ「よく聞け〜紅覇。確かに普通の「ジン」ならおまえではなく、おまえの横の色男を選ぶだろう」
覇「ゲホ、ゴホ」
炎「……」
お日様はまだ咳をしながら。
紅炎様は無表情に。……他のみんなは真剣な表情で。
ジンの次の言葉を待った。
レ「だけどその浮気者は、すでに「ジン」を三体も従えているじゃないか!」
炎「……浮気者……」
紅炎様がぼそっと呟いた。
心なしかいつも威厳のある声に、元気がない気がした。
思わぬ評価にショックを受けている感じだった。
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一花(プロフ) - おはようございます。沢山の閲覧、そしてお気に入りや評価、コメントありがとうございます。無事、本日(第2部は)全エピソード公開となりました。本当に有難うございます! 恐らく本日中に3部への頁もつなげます。あとがきも書きますが、一足先に御礼申し上げます。 (2014年10月5日 6時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - あとは蛇足ですが、プロットつくるまで名前辞典から引いた仮名で通すことがあります。仮名は、同じ時期に作った作品ならば共通です。今回のは、仮名時のものです。……もの凄く残念な形で表にでてしまいました_| ̄|○ すみませんm(_ _)m (2014年7月30日 13時) (レス) id: ab2859cca3 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 鈴さん» メモ帳や、他のアプリなどに打ち込みしたものを、公開時に名前変換可能にしています。……つまりは、主人公名の変換ミスです。混乱を招いてしまい、すみませんでしたm(_ _)m ご指摘くださり、本当に有り難うございますm(_ _)m (2014年7月30日 13時) (レス) id: ab2859cca3 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 鈴さん» コメント、ご指摘有り難うございますm(_ _)m そして、変換ミス、失礼いたしました。私の夢書きスタイルですが、主人公は基本的背景をもっていて、それに沿った裏設定があります。……名前もその一部です。普段、直接占いつくーるに打ち込まない場合(続く) (2014年7月30日 13時) (レス) id: ab2859cca3 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - こんにちは。失礼なのですが、質問です。設定で出てきた“梨奈”とは、どなたの事なのでしょう?本当に失礼ですがよろしくお願いします。 (2014年7月30日 8時) (レス) id: 94adc04a2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月12日 21時