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エピソード24 ページ27

炎「……」

そっと、炎兄が私の頬に手を伸ばす。

「!」

(……駄目!)

触られたら伝わっちゃう。
私の震えが……怯えが!
反射的に、ぱっと顔をそむけて兄の手から逃れる。
それでも兄の手が私の頬を追う。

炎「……震えている」

私の頬に触れた兄が大きな上半身をかがめて、俯いた私の顔を覗き込む。
その目は静かだ。
先程までの迷いも、私を探る様子もない。
ただ。
ただただ、小さな義妹を気遣っている……私が何度も救われた眼差しだった。

「……どうして?」

炎「……」

「そんな、気遣う必要なんて、ない、よ……」

思わず涙声になってしまいそうなのを堪える。
せっかく、明るくふるまっていたのに、ここで揺らいだら台無しだ。
――炎兄の役に立ちたい。
そのためには。

(―――――。……笑え)

9年前の幼子がふと顔を出しそうになる。
炎にぃと離れたくないよ! そう、叫び出しそうになるのをぐっとこらえる。
膝に添えた両手をぎゅっと握りしめる。

笑え。
笑え。
笑え。

―――――――――笑うんだ。

掌に爪が食い込んで、じわりと痛む。
でも、気にしない。
体の痛みが、心の痛みを紛らわしてくれるから。

さぁ、もう一度。

「私は皇女……そして、炎兄の妹。この9年間、沢山のことを、……仮の父として、兄として、ときに師として、炎兄は私に教えてくれました。私が強く乱世を生き抜けるよう、その術を炎兄は叩き込んでくれた。それは私の誇りです」

さぁ、今度はもっと自然に。
――大好きな兄へ、感謝を込めて。

(笑え――)

目を細める。口角をあげる。
ゆっくりと、自然に。
なるべく優雅に見えるように。

……皇族として、臣下には常に余裕のある微笑みを見せるといい、昔白蓮お兄ちゃんに言われたことがある。
炎兄も、私の笑顔が好きだと言ってくれていた。
だから、蓮兄が亡くなってからも、毎朝鏡の前で特訓してきたの。
炎兄の妹として。――煌帝国の正統な皇女として恥ずかしくないように。
兄は臣下ではもちろんないけど。
……私の成長を見てもらうんだ。
バルバッドの政略結婚で、ちゃんと私が『駒』として使い物になると、証明して見せる。

「だから、私は彼の地に嫁いだとしても、必ずや炎兄のため、『煌帝国皇女』として、バルバッド王妃を演じて見せます」

そういって、握った拳を開く。
頬に添えられた兄の手を、そっと両手で引き離した。

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設定タグ:マギ , 練紅炎 , 煌帝国   
作品ジャンル:アニメ
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一花(プロフ) - (↓の続き)いらっしゃるのは、本当に有難いです。ゆっくり更新ではありますが、常に励みになっております。たくさん、たくさん……ありがとうございます!! (2014年7月31日 19時) (レス) id: aa8e4f9320 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - いまでもお読みくださる方、有難うございます。物語は「よん」まで進みましたが、未だバルバッド入りしていない体たらくですが(滝汗) 宜しければ引き続きお付き合いくださると嬉しいです。そして、本日評価80になりました。今でも評価を押してくださる方が(続く) (2014年7月31日 19時) (レス) id: aa8e4f9320 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - すみません。。「にっ!」で、当初予定していた3分の1しか、物語が進みそうにない……という状態になったため、予告を変更いたしました(滝汗) (2014年5月18日 17時) (レス) id: aa8e4f9320 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 紅希さん» なんと……!!! 3期がある!!!(喜びに打ち震え中) 素敵な情報をありがとう(><) 楽しみがあるのは良いね♪ 今年頑張って行きぬきたいと思います(笑) (2014年4月12日 21時) (レス) id: aa8e4f9320 (このIDを非表示/違反報告)
紅希 - 一花さん» 3期は2015年にやるみたいですね♪私もそれまで小説を糧に頑張ります!!w (2014年4月12日 11時) (レス) id: f6b5ca3d02 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年2月3日 0時

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