エピソード１5 ページ18
龍「そうでしょうか、人の欲望は尽きない。……全てを失くしても、欲望を満たそうとするのではないですか」
互いの主張を議論し始める私達を見て、先生はオホンと咳払いをした。
経済学者「どちらの考えも間違いではありませんぞ。「資源」には限界がある。それは間違いない。されど、限りがあろうと、より多くを求める「欲望」を持つのも人の性。時にあるもの以上を求めることもある。……ですが、それでは人は滅ぶ。故に、国は民の欲望をコントロールし、滅ばぬよう尽力する必要があるのですじゃ」
……その方法を考えるのが、皇族たる、貴方方の務めです、と真剣な目で私たちに語ってくださった。
経済学者「では、今日はここまでにいたしましょう」
龍「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
一通りの授業が終わり、部屋を出ていく先生に、私と兄は礼をした。
「はぁ！ 今日も一日が終わったね」
うーーん、と万歳して伸びをしながら兄に話しかける。
龍「そうですね」
「白龍お兄ちゃんはこれからどうするの？」
龍「俺は食事をしたら、もう少し勉強するよ」
「お兄ちゃんは相変わらず真面目だねぇ」
龍「Aはどうするんですか？」
「私は、お夕飯を食べたら、炎兄のところに行くよ」
龍「……。紅炎殿のところ、ですか」
兄の顔が一瞬曇る。
「……。炎兄は優しいよ？」
龍「信用できません。あの男は組織と繋がっている」
「お兄ちゃん……」
龍「気をつけて下さい」
「……うん」
私は兄に笑って見せた。
白雄お兄ちゃん達が亡くなったころから、白龍お兄ちゃんは変わってしまった。
私には優しいけれど、この国の神官たち……煌帝国に色々と便宜を図ってくれる組織に対して、異常なほどに敵意を向けるようになった。
それだけじゃない。組織と関るお母様にまで反発するようになっていた。
もちろん、炎兄たち義兄にも警戒を向け、私が彼らと共にいるのを快く思わない様子だった。
それでも、白龍お兄ちゃんが、私にとって大切な兄上であることに変わりはない。
私がそうであったように、この兄にとっても、家族が亡くなったことでできた心の傷は深いのだろう。
私や実姉の白瑛お姉ちゃんと違い、龍兄は、二人の実兄の死の現場に居合わせてもいた。
恐らく、私よりもずっとショックを受けたはずだ。
――私にとって唯一の実兄が、いつかまた心から笑える日が来ますように。そう思いながら、私は兄の部屋を後にした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 172人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
一花(プロフ) - （↓の続き）いらっしゃるのは、本当に有難いです。ゆっくり更新ではありますが、常に励みになっております。たくさん、たくさん……ありがとうございます！！ (2014年7月31日 19時) (
レス) id: aa8e4f9320 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - いまでもお読みくださる方、有難うございます。物語は「よん」まで進みましたが、未だバルバッド入りしていない体たらくですが（滝汗） 宜しければ引き続きお付き合いくださると嬉しいです。そして、本日評価80になりました。今でも評価を押してくださる方が（続く） (2014年7月31日 19時) (レス) id: aa8e4f9320 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - すみません。。「にっ！」で、当初予定していた3分の１しか、物語が進みそうにない……という状態になったため、予告を変更いたしました（滝汗） (2014年5月18日 17時) (レス) id: aa8e4f9320 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 紅希さん» なんと……！！！ 3期がある！！！（喜びに打ち震え中） 素敵な情報をありがとう（＞＜） 楽しみがあるのは良いね♪ 今年頑張って行きぬきたいと思います（笑） (2014年4月12日 21時) (レス) id: aa8e4f9320 (このIDを非表示/違反報告)
紅希 - 一花さん» 3期は2015年にやるみたいですね♪私もそれまで小説を糧に頑張ります！！w (2014年4月12日 11時) (レス) id: f6b5ca3d02 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：一花 | 作成日時：2014年2月3日 0時
