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『拝啓 A
直接会えなくてすまん。
どっかの馬鹿の埋め合わせをせんといかんくての。
久しぶりにAに会えて嬉しかったぜよ。
だがわしが嫌われているようじゃ。
本当に悪いと思っている。
許してもらえんかもしれんが、また会いたい。
それに今Aが苦悩しちゅうことを一緒に背負いたい。
この手紙を読んじゅうっちゅうことは坂本と会っているということだろう。
坂本と共に来て欲しい。
もう一度会って話をしよう。
陸奥』
手紙を読み終わったのか、紙を閉じて大きな溜息。
手元にあるお茶を一口飲んで口を開いた。
「坂本さん」
「何ぜよ?」
「もう少し待って下さい…それどころじゃなくて」
「わかっとる。今のおまんの様子を見りゃあのう」
にこりと笑えば、ばつの悪そうな顔をした。
「じゃがそういう時こそ姉ちゃんに頼るんもいいんじゃなかか?」
「…私は姉だなんてあの人のこと」
「わしにはそういう風に思う器用な人間じゃと思わんがな、おまんのこと」
ぴくりと動いたのがわかる。
パフェを掬いながら何気ない雰囲気を装う。
「本当は、好きなんじゃろ?陸奥のこと」
「違、います…」
「本当に嫌いなら陸奥の代わりに喪主を務めたりせんじゃろ」
「あれは仕方なく…」
「陸奥の部屋に飾られてある家族写真」
そういうと顔を上げ、坂本を見た。
驚きのような、喜びのような、寂しさのような。
複雑な色の表情。
「幼いおまんらがうつっちょったがけんど、本当にええ笑顔しちょった」
「…」
「二人仲ようくっついてのー。陸奥に聞いたら嬉しそうにAの事話してくれたきに」
歯を見せて彼女に向けて笑う。
彼女はふ、と笑みを零し、パフェをつついた。
「まだもってたんだ。あの人」
着物に手を入れ、出てきたのは同じ写真。
少々傷が入っていたり古く見えるものの、あの仲良しな家族写真だ。
「私もお姉ちゃんも、結局一緒ってことだ」
「やっとゆーたの。お姉ちゃん、って」
「煩い」
「都合が悪くなると煩い、か…やっぱり姉妹じゃの」
そう言えば静かにAは笑った。
会計を済まし、店から出る。
「行く前に一度万事屋に帰ってもいいですか?
貴方のお陰で少し落ち着きました。
流石人誑しと言われるだけありますね」
くるりと足を万事屋へと運ばせた。
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Nattu(プロフ) - 麗羅さん» お返事遅くなって申し訳ございません。コメントありがとうございます*辰馬凄く好きなので自家発電にと書いていましたが、読んでいただけて幸いです。楽しみながら書きたいと思います*^^ (2021年2月20日 1時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅 - 辰馬の小説、少ないので嬉しかったです!面白くて、次が楽しみです!更新頑張って下さい! (2017年10月29日 16時) (レス) id: 9e2ac1505a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu。(2代目)(プロフ) - れんりさん» れんりさん、はじめまして。コメントありがとうございます。とても嬉しいです…ゆっくりとではありますが更新していきますので、よろしくお願いします!! (2016年4月11日 22時) (レス) id: db806a29f6 (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - 凄く面白いです!!更新楽しみに待ってます…! (2016年4月10日 9時) (レス) id: 285e1a358c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2015年11月17日 23時