十弍 ページ12
Aを船内へと迎え入れ、互いに向かいあって座る。
生活感のないすっきりとした自室。
飾られてあるのは、昔の写真のみ。
「お姉ちゃん、まだ持ってたんだ」
「まぁの。これだけが唯一の家族写真だから」
元気よく笑う少女が二人写る写真。
真ん中にはうさぎのぬいぐるみ。
(この頃はまだ仲が良かったっけ…)
お茶を啜るAを見ながら、笑みを零す。
ふと、彼女の着物下から大きな傷が見え、思わず腕を掴んだ。
彼女は目を丸くして抵抗した。
「お姉ちゃ、やめっ…」
抵抗した勢いでお茶が零れ落ち、互いの腕にかかるも御構い無し。
「…どがあした。この酷い傷」
ぴくりと止まり、唇を噛む。
着物を捲ってみれば傷は肘あたりまで深々と繋がっていた。
それと、腕以上に気になっていたのは、だらしなく伸ばされた右側の前髪。
触れようとすれば、全力で避けられる。
「わしと離れとる間何があった」
「…お姉ちゃんには関係ない」
「また、一人で抱え込むんかおまんは」
(昔から変わらない)
陸奥が父親と共に、母親と二人残してきた時も、
陸奥が勉学に励んでいる時も、
『迷惑かけたくないから。大丈夫だよ』
(この大丈夫、が一番信用にならない。
だから、こんなにも傷ついている。
それが自分にも責任があるのは充分にわかっている)
「A…わしにも同じ荷を背負わせて欲しい」
目をきちんと合わせて、ゆっくりと話しかける。
意思がしっかりと伝わるように。
再度手を伸ばした時、彼女は抵抗しなかった。
そのまま、前髪に触れ、搔き上げる。
「っ！…」
「見ないほうがよかったのに…びっくりさせてごめんね」
かたり、と写真立ては音をたてて倒れる。
写真の中で笑うA は、今も目の前で同じように笑っている…はずだった。
「誰にこんな…」
左目は三日月のように弧を描く目。
右には…大きな切り傷跡。
目なんて消えてしまっていて。
( 自分が隣に居れば。
父親と故郷を離れなければ。
…こうはならなかった？)
ぐるぐると頭の中を回る疑問符と後悔。
そんな陸奥の頭をぽんぽんと、撫でて
「心配してくれてありがとう。
でも、これは私が自身で作ったものだから。
お姉ちゃんは何も悪くないよ」
優しい言葉をかける。
(でもそれもまた、大丈夫、ではないサインなんじゃう？)
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Nattu(プロフ) - 麗羅さん» お返事遅くなって申し訳ございません。コメントありがとうございます*辰馬凄く好きなので自家発電にと書いていましたが、読んでいただけて幸いです。楽しみながら書きたいと思います*^^ (2021年2月20日 1時) (
レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅 - 辰馬の小説、少ないので嬉しかったです!面白くて、次が楽しみです!更新頑張って下さい! (2017年10月29日 16時) (レス) id: 9e2ac1505a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu。（2代目）(プロフ) - れんりさん» れんりさん、はじめまして。コメントありがとうございます。とても嬉しいです…ゆっくりとではありますが更新していきますので、よろしくお願いします!! (2016年4月11日 22時) (レス) id: db806a29f6 (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - 凄く面白いです！！更新楽しみに待ってます…！ (2016年4月10日 9時) (レス) id: 285e1a358c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Nattu | 作成日時：2015年11月17日 23時
