十三 ページ13
肌と肌が重なる感覚がくすぐったい。
目を細めるも、それは片目だけで。
大きな傷の上には、細く白い陸奥の手。
「のう。A。何故こうなったがか。そろそろ教えてくれてもよかろう?」
そう尋ねられるも、柔らかに笑って返す。
(私には、心配してくれる人がいるだけで充分。これ以上巻き込むわけにはいかない)
すくりと立ち上がり、姉の方を見る。
「ありがとう。私はお姉ちゃんや皆がいるだけで充分だから。嬉しいよ。また暇なときにでも相手してよ」
少し乱れた前髪を整え、また片目だけが髪から覗く。
手をひらり、と振り部屋から出た。
陸奥も諦めたのか追ってくることはしなかった。
扉のすぐ側にはサングラスをかけた男が壁に寄っかかっていて。
軽く会釈して通り過ぎようとすれば、
「もうええがか?」
背中越しに声をかける。
「坂本さん。連れてきてくれてありがとうございました」
振り向いて精一杯の作り笑顔。
彼は寄っ掛かる身体を起こし、Aの方に足を向ける。
近づいてくる影に少しばかり身構えていると、不意に抱きしめられた。
「ちょっ、坂本さ」
「おんしはやっぱし陸奥の妹じゃのー」
頭上からはくつくつと笑う声。
へ、と情けない声を出せば優しく撫でられる。
「陸奥とおんなじように、強がって、誰にも頼ろうとせん。すぐ一人で抱え込む。少しは、重荷無くせると思ったんがのー」
「残念ながら、私はそう単純じゃないので」
「アッハッハーこりゃめぇったのー」
力が弱くなった隙にするりと抜け出す。
「今日はありがとうございました。また来ます、人誑しさん」
船から出ても尚、触れられた場所が熱いのは、太陽の光のせいにした。
.
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「ただいまー」
空が橙色に染まりつつある頃。
万事屋へ戻る。
部屋の奥では、家主がソファーでジャンプ片手に寝ていて、他の二人はいないようだ。
机上には
『Aさん
僕の家で鍋しますんで、先に神楽ちゃんと行ってますね。
すみませんけど、銀さんを連れて来て下さい。
僕らが起こしても起きなかったんで…
宜しくお願いします。
新八』
(やれやれ…とんだ家主だ事…)
溜息をつきつつ、彼を揺さぶる。
「銀さーん、起きてくださいー新八君の所行きますよー」
「ん…もうちょっと…」
「何寝ぼけてるんですか早」
ふいに腕を掴まれて言葉が止まる。
「…辰馬に何された?」
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Nattu(プロフ) - 麗羅さん» お返事遅くなって申し訳ございません。コメントありがとうございます*辰馬凄く好きなので自家発電にと書いていましたが、読んでいただけて幸いです。楽しみながら書きたいと思います*^^ (2021年2月20日 1時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅 - 辰馬の小説、少ないので嬉しかったです!面白くて、次が楽しみです!更新頑張って下さい! (2017年10月29日 16時) (レス) id: 9e2ac1505a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu。(2代目)(プロフ) - れんりさん» れんりさん、はじめまして。コメントありがとうございます。とても嬉しいです…ゆっくりとではありますが更新していきますので、よろしくお願いします!! (2016年4月11日 22時) (レス) id: db806a29f6 (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - 凄く面白いです!!更新楽しみに待ってます…! (2016年4月10日 9時) (レス) id: 285e1a358c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2015年11月17日 23時