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それから十分ほど経過しただろうか。玄関の方で物音がした。
「あれ、伊沢の靴が出てる。と……」
「二足出てるな。今日お客さん来る予定あったっけ？」
「いや、無い筈だけど」
聞き馴染みの無い男性の声が二人分。会話から察するに、ここの人間は来たら靴箱の中に靴をしまうらしい。そりゃそうだ。最大で何人が集うのか知らないが、皆が靴を出しっ放しにしていたら玄関が大変な事になってしまう。
廊下を歩いてくる音に次いでドアが開いた。私の姿を見止めた二人の男性は、きょとんとした顔をしている。
「お邪魔してます」
とりあえず軽く頭を下げて挨拶する。果たしてこの挨拶が今の状況に適切なのかはちょっと分からない。
二人の内の片方は何処かで見た顔のような気がした。もう一人は全く見覚えが無い。いずれにせよ彼らは、普段表には出てこないスタッフなのだろう。表面に見えるよりもずっと多くのスタッフが居る、といつかの動画で言っていたが、正にそのメンバーなのだろうか。
「あ、どうも」
二人は私に軽く会釈した後、揃って互いの顔を見合わせて首を傾げた。今日他社との打ち合わせなんてあったか？ とでも言いたげな顔だ。無いですよ、そんなもの。だって私はただの近所に住んでいるだけの女なのだから。
「すみません、えっと……私、近所に住んでいる者なんですけども。彼が道端で具合悪そうにしていたので、ちょっと付き添ってきまして……」
彼、と言いながら伊沢くんを手のひらで指し示す。ソファに横になったままの伊沢くんが、軽く片手を挙げた。
「ほんと、すみません……」
ふにゃふにゃと揺れた声の伊沢くんに、二人が慌てて駆け寄った。
「えっ。伊沢、大丈夫？」
「いや、マジでそこまでおおごとじゃないんで……寝てれば治ります……」
病院に連れて行った方がいいんじゃないかと思うが、後は本人たちが決める話だろう。部外者である私はもうお役御免だ。
「じゃあ、私はこれで」
失礼しますね、と荷物を手にする。手前の男性が振り向いて頭を下げてきた。
「ああ、すみません。わざわざありがとうございました」
「いえ……」
そのまま退室しようとする私に、後ろから声が投げかけられる。
「あ、待ってください。今度ちゃんとお礼したいんで、連絡先を……」
声を挙げた伊沢くんが身体を起こそうとした。けれど、すぐにその身体はソファへと沈む。具合が悪いのだから無理はしないで欲しい。
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奈都(プロフ) - Komiさん» コメントありがとうございます。トロイメライが出来上がってる二人の話なので、順番が逆になってしまうのですが、あの関係になるまでにこんな流れがあったんだな、という感じでお読み頂ければ幸いです。出来るだけマメに更新していくので是非今後もお願いします…！ (2019年9月14日 16時) (
レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
Komi(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます！トロイメライの頃からizwさんの2人が大好きで、始まりのストーリーが読めるのがとても嬉しいです^^毎日更新を楽しみに生活しています笑これからも応援しています！！ (2019年9月14日 5時) (レス) id: 31bd00c83a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奈都
| 作成日時：2019年8月11日 10時
