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「おーっと、これは弊社の渡辺航平が取りました! おめでとうございます! では、折角なので何か一言!」
伊沢さんが言うと、式場のスタッフが渡辺くんに近付きスッとマイクを向けた。
「えー、ご結婚おめでとうございます。あの、まさかのブロッコリー貰っちゃってどうしようって感じなんですが、まあ僕は福良さんと違ってしっかり野菜も食べれるんで、美味しく頂こうと思います!」
きちんと笑いを取りつつ、もう一度ブロッコリーを掲げた渡辺くんに向けて、福良さんが「一言多い!」と拗ねたように声を投げかけていた。
男性メインのブロッコリートスの次はブーケトスのようだ。先程の福良さんと同じ場所に今度は新婦が立ち、振りかぶった際の軌道を確認している。隣に立つ福良さんと、先程のブロッコリーの軌道を再確認しつつ、二人で顔を寄せて笑っていた。
いつだったか飲み会の時、結構酔ってしまった福良さんが、彼女の事を「本当に可愛い、世界一可愛い」と言っていた事を思い出す。ドレスを美しく見せようと綺麗に伸びた背筋、福良さん曰く元々細いのだが今日の為に更に引き締めた身体、何よりも福良さんを愛おしそうに見つめる笑顔は本当に幸せそうだ。
「じゃあ行きまーす!」
声と同時に花束がふわりと空に舞う。ブロッコリーよりは軽そうだ。山なりに線を描いたブーケは次の瞬間、そのままぽすんと私の腕の中に落ちてきた。特に大きく手を伸ばした訳でも無く、まさか自分の手元に来るとは思っておらず、一瞬何が起きたのか分からなかった。
「えっ、取れちゃった……」
手の中のブーケをまじまじと見つつ呟くと、
「わあ、おめでとう!」
と一気に周りからお祝いの声と拍手が聞こえてくる。反射的に駿貴さんの姿を探すと、彼は周りの人間に交じって一緒に大きな拍手をしていた。
「おめでとうございます! と言うか、なんとまたしてもQuizKnockの人間からで、僕の立場からは嬉しいけどちょっと申し訳ない! 社を挙げて、お二人の結婚のお祝いをしている気持ちの表れだ、という事にして頂きたい所です!」
マイク越しに苦笑交じりの伊沢さんの声が聞こえる。ではAさんも一言どうぞ――と促され、私の元にもマイクがやってきた。
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奈都(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます。それぞれの気持ちに寄り添って書いてきたつもりではあるので、感情移入して頂けているととても嬉しいです。やっぱり最終的にはきっちりゴールインしてほしい…!と思いつつ亀の歩みですが、これからも見守って頂けると幸いです。 (2021年10月1日 22時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 更新に歓喜です‼︎Gravityから読ませていただいている側としては感情移入しすぎて、若干泣きそうになりましたが、結婚考えてくれてたんだとホッとしました(笑)何度読み返してもキュンとできる奈都さんの小説、、私の元気のもとです! (2021年9月26日 2時) (レス) @page31 id: 1f7bb03b81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奈都 | 作成日時:2021年1月31日 13時