126話 ページ32
「ヴッ…いっ、た……」
「当たり前だ、痛いようにやってるからな。」
立ちはだかる男はその長い足を惜しげも無く俺の腹に叩き入れた。何かが腹の内よりせり上がってくる感覚を必死で飲み込む。身体は数メートルほど地を滑り、壁にぶつかって止まった。打ち付けた箇所も蹴り入れられた場所も熱を持って痛みを訴える。足や手は縄で縛られていて自由に動かすことは出来ないから、黙って相手の暴力を受けることだけが俺に許されている。
マスターのバーでは逃げる前に睡眠剤を嗅がされた。気がついたら見知らぬ場所にいて縛られていたのだから驚いたものだ。どうやら担がれて運ばれたらしい。サビで汚れた地面がひんやりと体を冷やし、同時に悪い汗も背中を伝う。辛うじて頭を回して状況把握をしようとすれば、部屋の隅で足を組んでこちらを眺める男を見つけた。目が合って「起きたか」と声をかけられる。その音にも外見にも見覚えのあった俺は、その時初めて正しく状況を悟った。その銀色の髪も赤紫の瞳も見覚えがあったからだ。
「まーだ話す気になんねえ？俺サマだってこんなことはしたくないんだぜ。」
「顧客情報は、何があっても提供することは、できない、っ、」
「そうかよ。」
革靴の高い音が響いて2発、再び腹に蹴りが入った。痛いなんてもんじゃない。こちらとら修羅場経験は多いが非力な一般人なのだ。こんなのに耐え切れるわけがない。しかし俺が苦しそうに顔を歪ませれば歪ませるほど銀髪の男、ギルベルトは一層彫りの良い顔立ちで笑うのだった。
恐怖が心の中に立ち込めていく。必死にまだ死にたくないと思う。既に目覚めてから30分ほど、10回以上は蹴られ踏まれにじられを繰り返しているような気がする。ギルベルトという男は遠慮も慈悲もなかった。こいつはやはり裏の人間なのだ。
「おいおい、こんなんで死ぬなんて馬鹿げてるぜ。お前はたった一言、あの情報を買った人間の名前を言えばいいだけなんだよ。わかるか？」
「ぐ、…っ、う…」
「は、頑固な奴だな。お前がどうしようとお前の雇い主は助けに来ねえってのによ。何をそんなに守る必要があんだよ。」
俺の髪は容赦なくギルベルトの大きな手に鷲掴みされ、そのまま彼に鼻血塗れの汚い顔面を晒すはめになる。既にまぶたが切れているようで視界は明瞭ではないが、あまりいい雰囲気でないことはよくわかっていた。
そのまま強く頭を引っ張りあげられる。
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ミチル - ID違うんですけど一応同一人物です、、、！ (2022年9月15日 7時) (
レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメからしばらく経ちましたが未だに見に来てます。とても面白いし、この作品の続きを楽しみにしている人もいると思います！私はいつまでも続きを待ってます！ (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメ失礼します。凄い面白くてあっという間に読んでしまいました！更新楽しみにしてます！ (2022年8月3日 23時) (レス) id: e447b7200f (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 山口さんさん» 四年も前の二次創作に心温まるお言葉をくださり、ありがとうございました。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
山口さん(プロフ) - ただただこのそうるさんのひとつひとつの表現が好きです (2022年4月30日 2時) (レス) id: 218fc2ba1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そうる x他1人 | 作成日時：2018年1月9日 17時
