101話 ページ5
俺も祖国にいた頃は、普通の子供と同じようにアニメーションをよく見ていた。我が国はその手の技術に関してはとても先進的で、今では世界でも様々なアニメーションを見ることが出来る。青いネコ型ロボットや、顔をパンで作ったヒーローを俺だって人並みに見てきた。あの見た目は子供の名探偵は、実は俺が遊び半分でこの職業に手を出したきっかけだったりもするのだ。
そして、あのある種の呪いのように事件と出会ってしまう体質は、あながち冗談とも言いきれない。
流石にあれほど頻繁ではなくとも、探偵という生き物は引き寄せられてしまう性なのだと、俺は思う。
「もう死んでやるんだから!!」
ヒステリックな女の叫び声が聞こえたのは、俺がアルフレッドと昼飯を食っていた時だった。たまには外で食べようと俺を連れ出したのはアルフレッドで、美味いと評判のハンバーガーショップのテラスで俺はチーズたっぷりのハンバーガーを頬張っていた。アルフレッドは一つじゃ足らないようで、既に三つ目に手をかけている。食い意地の張ったやつだ。
悲鳴の上がった方へ目をやると、俺たちから数十メートルほど離れた場所で、鮮やかなピンク色のワンピースを着た女が何やら目の前の男にまくし立てている。女は手に何かを持っていて、目を凝らすとそれが小さなビンであることが分かった。中身もあるらしい。ビンのコルクは引き抜かれているのか、独特な香りが僅かながらもここまで漂ってくる。咄嗟に鼻を手で覆った。その場の誰もがそうしたように。
どうやら修羅場のようだった。途切れ途切れの金切り声を繋ぎ合わせると、男の浮気がバレてしまったようだ。男は彼女の剣幕にたじろいだのか、腰を抜かしてへたり込んでいるといった具合で情けない。
ビンの怪しげな中身と女の危うさにに誰も近づこうとする者はおらず、遠巻きに見つめるのみだ。アルフレッドがちょいちょい、と俺を指でつつく。行かなくていいのかい、とでも言うように。
「面倒くせえなあ……」
口からつい漏れた言葉は間違いなく本音である。
ただ、彼女が手にしているビンの中身は恐らく適切に処理しなければいけない物であるのはもう確信していたので、誰も行かないのなら俺が腰を上げざるを得ないのだ。
立ち上がった俺をアルフレッドはとても満足そうに見つめた。期待に溢れていてうんざりする。俺はそんな崇高な人間ではない。
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ミチル - ID違うんですけど一応同一人物です、、、! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメからしばらく経ちましたが未だに見に来てます。とても面白いし、この作品の続きを楽しみにしている人もいると思います!私はいつまでも続きを待ってます! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメ失礼します。凄い面白くてあっという間に読んでしまいました!更新楽しみにしてます! (2022年8月3日 23時) (レス) id: e447b7200f (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 山口さんさん» 四年も前の二次創作に心温まるお言葉をくださり、ありがとうございました。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
山口さん(プロフ) - ただただこのそうるさんのひとつひとつの表現が好きです (2022年4月30日 2時) (レス) id: 218fc2ba1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そうる x他1人 | 作成日時:2018年1月9日 17時