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100話 ページ4

アントーニョは結果的に俺を事務所まで送り届けてくれた。若干ふらつきの残る足取りでは心配だと、肩を貸してくれたのだ。お陰で、事務所へのあのややこしい迷路のごとき道に散々文句を言われる羽目にはなったが、そこは恩義があるので大人しくしておく。ようやく着いた時には、俺たちの表情に疲れが滲み始めていた。



「なんでこんなややこしいとこに……あかん、真っ直ぐ帰れるか不安やわ。」

「すんません……」



支えられていた肩を外され、そのまま家の前の階段に座り込んだ。アントーニョの顔には疲労感こそあったものの、まるで本国にいる兄貴のようにやれやれ、と言った様子で笑うのだから感服である。
ほんの少し懐かしさを感じて、アントーニョへの親しみも湧いた。



「もう体調は大丈夫そうやな。」

「お陰様で。助かりました。」

「ええねんええねん。次会った時に酒でも奢ってくれたらええわ。」



ほな、俺は仕事があるさかい、またな。

数度手を振ってアントーニョは来た道を引き返して行く。俺もその背に何度か手を振り返し、そうして彼は見えなくなった。
助けたらギブアンドテイク、そんな部分にも好感が持てて、ほう、と息をつく。俺は昔からあの手の兄貴分のような男に憧れることが多かった。ああなれたら、なんて思う。同じ兄弟を持つ立場でもアーサーとは違った気構え。非常にかっこいい。
俺もあんな男前になれたら、モテモテになったりするんだろうか。美女に言い寄られたらどうしよう、なんて。実際には生まれてこの方ハーレムなんていう男のロマンは勿論、ここ数年は恋人もいないほどだった。そりゃガキの頃は引く手数多だったんだぜ。近所で有名な美少年だった…うん、悲しいので妄想はここまでにしておく。過去の栄光に縋る男はダサい。
呆れたように自嘲して、階段から立ち上がった。どうにも眠たくてならない。まだ頭も痛いことだし、アルフレッドが来るまでは寝ていよう。

開けた扉は俺を飲み込んだ後にゆっくりと閉じていく。真っ直ぐベッドに直行した俺は、二日酔いも相まって普段気づくはずのことに気づかなかったのだ。

俺をじっと見つめる視線と、忍び寄る危機に。

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設定タグ:男主 , ヘタリア , APH   
作品ジャンル:アニメ
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ミチル - ID違うんですけど一応同一人物です、、、! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメからしばらく経ちましたが未だに見に来てます。とても面白いし、この作品の続きを楽しみにしている人もいると思います!私はいつまでも続きを待ってます! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメ失礼します。凄い面白くてあっという間に読んでしまいました!更新楽しみにしてます! (2022年8月3日 23時) (レス) id: e447b7200f (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 山口さんさん» 四年も前の二次創作に心温まるお言葉をくださり、ありがとうございました。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
山口さん(プロフ) - ただただこのそうるさんのひとつひとつの表現が好きです (2022年4月30日 2時) (レス) id: 218fc2ba1d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:そうる x他1人 | 作成日時:2018年1月9日 17時

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