102話 ページ6
「あーえっと、お嬢さん?」
「なによっ!?」
肩を二度叩いて彼女を呼んだ。振り返った女は正に鬼の形相。頭に血が上りきっと怒りのままに行動を起こしている。そんなに酷い浮気だったのだろうか。
彼女に近づく度に嗅ぎ慣れない香りは増した。何をどうしたらこんなものを入手出来るのかは分からなかったが、ここは落ち着いて、冷静に対処だ。
「その男がどんな野郎かは存じ上げませんが、貴方が死ぬのは間違っていますよ。」
「うるさい!!こいつに自分の罪を思い知らせてやるんだ!邪魔すんな!!」
彼女は小さなビンをぎゅうと握りしめる。その中にはやはり白色の粉が僅かに入っていた。既にその栓が抜かれて既に三十分ほど。その様子を見ると、どうやら彼女はあまり薬などに詳しい質ではないようだ。
太陽は俺の頭の真上に輝いている。肌を心地良い風が撫でる。こんな日は静かに散歩や読書をしたいのに。なんでこんな目に。
アルフレッドには危ないので観衆と共に見守ってもらっている。もし俺の身に何かありそうな時は、彼が止めに入ってくれるはずだ。
「貴方、もしかしてその粉飲んで死のうとしてます?」
「は、それがどうし…」
「多分ね、無理ですよ。」
「はあ?」
指で小ビンを示すと、彼女は意味がわからないというような顔をしながら、一瞬そのビンに目線を向ける。
彼女のその様子から、やはり完全なる素人であると確証を得たので、そのまま続けた。
「青酸カリでしょ、それ。その香りですもんね。」
彼女が苦虫を噛み潰したような顔でぐうと唸る。やはりビンゴ。ぶっちゃけなんかしらの毒物とは思っていたが、半分は勘だった。外れてもめげずに思いつくだけ挙げていく心算はあったので、初手で当たればそれで万歳である。
彼女は誰かをこっそり殺したい訳では無い。自分が死ぬためにそれを手に入れたのだ。だから中身がバレても特に焦る様子だけは見受けられなかった。
ただ、薬が既に手元にあるということは、彼女は事前にそれを何処かで入手し準備していたということだ。シアン化カリウム系統の毒物がそう簡単に手に入る訳は無いし、裏ルート経由ならそこそこ金も要る。
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ミチル - ID違うんですけど一応同一人物です、、、! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメからしばらく経ちましたが未だに見に来てます。とても面白いし、この作品の続きを楽しみにしている人もいると思います!私はいつまでも続きを待ってます! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメ失礼します。凄い面白くてあっという間に読んでしまいました!更新楽しみにしてます! (2022年8月3日 23時) (レス) id: e447b7200f (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 山口さんさん» 四年も前の二次創作に心温まるお言葉をくださり、ありがとうございました。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
山口さん(プロフ) - ただただこのそうるさんのひとつひとつの表現が好きです (2022年4月30日 2時) (レス) id: 218fc2ba1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そうる x他1人 | 作成日時:2018年1月9日 17時