48.素直な思い ページ9
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「A……、A……」
誰だろう、肩を揺すられている気がする。
体が鉛のように重たい……。
最近居残りしすぎたかな、そんなことを思いながら顔を上げると眩しい光が目に入った。
その光に片目を瞑りながらそのもっと上を見ると御幸がいた。
ん……?
え、ここって私の部屋じゃ……。
そう思って周りを見ると視界にはいつもミーティングに使う食堂のテーブルとイス。
『うそ……』
「うそじゃねーよ。さっさと起きろ。風邪引くぞ」
御幸の格好はゆるゆるとしたスウェットとジャージ。
時計を見れば11時15分。
『爆睡だ…』
思わず額に手を当てて項垂れていると御幸が急に私の顔の高さに合わせてしゃがんだ。
「おまえ、昨日何時に寝た」
『12時ごろ♡』
「…本当のところは?」
『…3時です』
「…………はぁ〜〜〜」
ふか〜い溜息をついた我がチームの正捕手様はひと睨みすると、私を背中と膝の裏に手を入れて持ち上げた。
つまり、お姫様抱っこだ。
『えっ!?ちょ、ちょっと!御幸!!』
女子なら嬉しいシチュエーション。
でも、実は高所恐怖症である私にとっては恐怖以外の何ものでもない。
もう怖すぎて恥じらいとかもどっかに飛んでいった私は、恐怖感から逃れるように御幸の首に手を回した。
「うおっ!?A…」
『御幸っ、動かないで……』
「っ…………」
本当に高いところはダメなのだ。
観覧車なんか乗ってるカップルを見るとゾッとする。いくら彼氏が観覧車乗りたいって言ってもそれだけは無理なお願いだ。
遊園地なんか地獄だと思う。
若干涙目になった気もするがそんなの気にしてられない。首に回した力を強くした。
御幸の顔なんか見る余裕もなくて。
「…そのまま顔押し付けとけ。部屋まで連れてくぞ」
言われるままに御幸の体に顔を押し付けた。
御幸の歩くリズムに合わせて体もちょっと揺れてそれがまた怖い。しがみつくことしか思いつかない。
「……おまえ、もうちょっと自分を大事にしろよ」
『……………………』
「お前もチームの一員なんだよ。マネが倒れたら困るのもみんな。先輩達、悲しむぞ」
『御幸は…?』
「……、そんなこと考えたくねー。だから元気でいろ。分かったな」
『…うん』
なんでこんなこと聞いたかは分からなかったけど誤魔化したりせず答えてくれた御幸が嬉しくて安心して寝てしまった。
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夏乃実(プロフ) - 雪星さん» 雪星さん…!まさかコメントして下さるなんて。ありがとうございますm(*_ _)m 青春の匂い。まさに私が目指してるものです。醸し出されていたなら良かったです← 雪星さんの新作も陰ながら読ませてもらいました!頑張ります^^* (2017年2月5日 22時) (レス) id: 926ac8ac50 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - 初コメ失礼します…(^^;コッソリ読ませてもらってます(笑)原作沿い+オリジナル要素ありということで、青春の匂いがする素敵な作品だと思います!原作沿いならではの苦労もあると思いますが、夏乃実さんのペースで更新頑張ってください(^-^) (2017年2月5日 21時) (レス) id: 51d66f5e63 (このIDを非表示/違反報告)
こん - 夏乃実さん» そんなことないです!!はい、頑張って下さい(*'▽'*)応援しています! (2016年9月16日 20時) (レス) id: 5a35b7a5ac (このIDを非表示/違反報告)
夏乃実(プロフ) - こんさん» こんさん!!コメントありがとうございます(涙)全然ドキドキワクワクする作品ではないですが楽しみにしててください(笑)頑張りますね! (2016年9月16日 20時) (レス) id: 753635ea11 (このIDを非表示/違反報告)
こん - コメント失礼します。そしてコメントして頂いてありがとうございました(T_T)夏乃実さんから頂いて本当に恐縮です。夏乃実さんの作品の更新も楽しみにしています。また見に来ます(*'▽'*) (2016年9月16日 2時) (レス) id: 5a35b7a5ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏乃実 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/rumitann1/
作成日時:2016年3月13日 12時