【◇】俺らのマネージャー[２]

62.もう一つの目的 ページ29

.


練習試合一試合目

相手は甲子園常連校、大阪桐生高校。

パワー野球が売りのこの高校と降谷君の剛速球との対決は白熱したものになるだろう




ーーー本来の彼の実力なら。






｢ボールフォア！｣



一回表、青道高校…既に三点失点

その殆どの要因がフォアボールでの押し出し。



流石は昨年の夏の甲子園準優勝校だ。

高めの球には徹底して振りにこない。


＿＿そして、甘い球も見逃さない。






ほら、また甘い球





カキーン＿＿




センターに抜けるかと思われたその打球は亮さんが取って倉持が一塁に送球した。


一気にグラウンドが、ギャラリーの声で盛り上がる。



鮮やかな二遊間のコンビプレー

思わず見惚れてしまうほど魅せつけてくれるこの2人は日本一の二遊間だと思う。





なんとか後続を断ち、一回表で3-0





.






.




一回裏、青道高校は亮さん・純さん・哲さん・増子先輩の4人の打線が繋がって一点返した。




それでも桐生打線は容赦なく降谷君を攻め立てる。





4回表途中でスコア11-2

こんなに打ち込まれる彼を見たのは初めてだ。




…それとここまで来て気づいたことがある。





『監督。先輩達が降谷君に声を掛けていないのも今回の目的のためですか？』


｢あぁ。野球はひとりではできない、そのことをあいつが感じてくれれば今よりもっと、あいつは強くなると思ったからな｣



隣でクリス先輩も頷いてる。



本来ならマウンドに向かって声を掛けるはずの野手たちが誰も声を掛けていない。





降谷君が経験してきた野球にはおそらく『信頼』というものがなかったんだろう。

野球は9人でやるスポーツ、それを降谷くんにもわかって欲しいんだ。



どこかみんなと一線を引いてた降谷君が今日の試合で『仲間』というものも分かってくれたら


＿＿降谷君はもっと強くなれる




いろんなことを知って、経験して、力にして
そうやって強くなっていく。



私は降谷君にもそうやって強くなって欲しい、と思う。
.






.

63.その場所→←61.気まぐれ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す