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千さんの彼女ちゃん――Aさんに案内してもらって千さんを家へと連れ帰る。
彼女ちゃんに会ったからかうきうきるんるんといった感じで、全くもって大人しくしようとしない隣のよっぱらリーマンをさっさと手放したい。
足元が覚束なく右へ左へ行こうとする上に空いている右腕をブンブン振り回すものだから、肩を組んで歩いているこっちもブンブン振り回される。
今度絶対何か奢らせる。
そんなことを思われているとは露知らずなお隣さんは「Aちゃんが歩いてるー、かわいー」といった調子でずっとかわいいかわいい言っていて、Aさんは気まずそうにしている。
前から彼女ちゃんが絡んだら性格変わるなって思ってたけど、酒が入ると更に面倒くさい方向に変わるって分かったから今後の教訓にしよ。
「あ、ここです」とAさんがマンションのエントランスへ進む後を、少し大人しくなった千さんを連れてついていく。
しんと静まり返っている廊下に、鍵を開ける音とコツコツという靴の音だけが響いた。
開いたままになっている玄関へ入り靴を脱ごうとするが、千さんはそのまま土足で部屋に入ろうとするので慌てて止めると、その場に座り込んで伸ばした足を左右に動かし「脱げへんー」と言う。
「いや、そんなんで脱げるわけないやろ」と心の中でつっこんでいると見兼ねたAさんがこちらへ来て、呆れたような、でもどこか愛おしそうな表情で靴を脱がしている。
こんな顔するんやったら、絶対千さんのこと好きやん。
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作者名:夏霞 | 作成日時:2019年1月27日 20時