40話 ページ40
tn.side
自分はこの令嬢が苦手だと気づいていた。
「あんなことがあって、まだ一週間やで。アンタは随分と変わり身が早いんやな」
自分でも酷い言葉だとは思った。両親を亡くして、あんなにも泣いていた彼女の傷が癒えたわけが無い。
わかっている。わかっているけど、どうしても出てしまった言葉は止まらない。
言ってから後悔するなんてこと、わかってはいて。それでも止まれないことを知っていた。
「おい、トン氏」
この間は自分の方が冷たかったくせに。
執務机の前に座るグルッペンにジロリと睨まられる。
あの日、グルッペンはぼろぼろと大粒の涙を流し続ける彼女を無視して、遂には最後の最後まで。
報告書にある言葉を一文字一句逃さずに全て話してしまった。犯人の侵入経路、当時の状況、現場の状況、ご両親の死因、凶器。それはもう全てをありありと。
話が終わる頃にはもう彼女はその場に蹲っていた。彼女を総統室まで連れてきたしんぺい神、そして彼女のことを気に入ったらしいゾムに肩を抱かれ、頭を撫でられ、抱き締められ。
当のグルッペンは大先生に胸ぐらを掴まれていた。いい加減にしろ、と。
それでも、グルッペンにとってはそれが然るべき行動だった。どんなに辛くても、遺された彼女が受け入れなければいけない事実。
だけど、どうやら今は違うらしい。
それが然るべき行動ではない今、彼女に対してご両親のことについて話すのはタブーだと。
グルッペンはなんだかんだ優しい人間だ。そう言うことなのだろう。
自分でだってわかってはいる。
自分がしていることはとても酷い事だと。
どうして立ち直ろうと、何かをしようと前を向いた彼女を責めるような行動が出来ようか。
それが出来てしまう自分が、彼女を自分の我儘で縛りつけようとする自分が、嫌いだ。
「いいえ、トントン様。あんなことが、あったからです」
あの日から一週間が経った、今。
そう言って彼女は、ニコリと笑った。
ああ、だから嫌いなんだ。
どうしてそうやって笑うんだ。
辛いに決まってる。
自分だって命を狙われ、間一髪で生き延びたのだ。
元々城内でも、街へ降りても、ご令嬢の集まるパーティーでだって。何処へ行っても彼女への好奇、嫉妬、嫌悪の視線は、言葉は止まることを知らない。
更には婚約者にまで裏切られているようなもの。
そんな彼女が無理に笑おうとする姿が、無理に強くあろうとする姿が、嫌いなんだ。
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秋人(プロフ) - パスワード掛けても公開して下さってありがとう御座います。本当に好きなお話なのでうれしいです。作者様に無理のないように過ごして下さい。 (2022年3月12日 23時) (
レス) id: 3a6567d6ac (このIDを非表示/違反報告)
よにん - 前に見かけてまた見たいと思っていてまた見れて嬉しいです。応援してます！ (2020年6月24日 15時) (レス) id: 3491a11aac (このIDを非表示/違反報告)
鬼雷 - 初コメ失礼します!少し前に見つけてひっそりと応援しておりました!ストーリーが凄く好きで先が凄く気になります!作者様のペースで頑張ってください!更新されるのを楽しみにしてます!完結まで追いかけます!頑張ってください! (2020年6月24日 0時) (レス) id: 15f01a3427 (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴(プロフ) - 茄子さん» 教えてくださりありがとうございます！！これからも頑張ってください！！他はもう素敵な話ばかりで読み入ります！もしもあったら聞かせてもらいます…！ (2020年6月17日 19時) (レス) id: c59a6d75f0 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - りんご飴さん» コメントありがとうございます！ありがとうございます！泣きます(；；) 手首を掴んだのはsypさんです！いえいえ、分かりづらかったかもしれません……。ごめんなさい(；；) 分からないところがあればジャンジャン聞いちゃってください！ありがとうございました(^_^) (2020年6月16日 20時) (レス) id: 8809630e87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茄子 | 作成日時：2020年4月6日 21時
