41話 ページ41
tn.side
「アンタの後ろ盾なんてもうなくなったようなもんやろ。……今更何やったって、無駄や」
まだ手がつけられていない書類の山から数枚手に取って、気を紛らわすように中身を確認する。
勿論、彼女を傷付けているだろう言葉は止まらない。
「ショッピくんがレイカ嬢に……」
「トン氏。いい加減口を慎め」
それ以上言ってはいけない、なんて思いながらも止まらない口の動きに時分でも飽き飽きしていた。
怒気のこもったグルッペンの制止の声に、内心ほっとしていた。
自分でなんて止められないし、止め方も知らない。
くだらないし、自分が馬鹿で馬鹿で仕方が無い。
今更何をやっても無駄なのは、全部。
自分だって同じじゃないか。
「…トントン様。今更の行動だと言うことは重々承知しています。けれど、やらなくてはいけないことなんです」
ひとらんと同じ、真っ黒の、そして真っ直ぐな瞳と目が合う。
ひとらんもそうだが、自分はこの瞳が嫌いだ。その瞳は何も映さないようで、どんな色の、どんなに美しい瞳よりも簡単にその感情を、そして醜い自分を映すから。
そんな彼女の瞳を見ていることが出来ずに目を逸らした。
グルッペンの瞳とは違う。ひとらんと同じようで、違う。吸い込まれそうな瞳が、酷く怖い。
あの食堂での出来事。
そこで見た彼女の苦しそうな表情が嫌いだ。
周りからどう思われようとも、何としてもメイドを守ろうとした彼女の人の良さが嫌いだ。
弱いようで、彼女の中に垣間見えた強さが嫌いだ。
あの日の、あの時の。
膝から崩れ落ちた彼女の姿を鮮明に覚えている。
無表情なのに、涙だけは流していた。そんな彼女の姿をもう二度と見たくはないけれど。
ずっと泣いていればいい。ずっと弱っていればいい。
「お願いします、トントン様。グルッペン様。私に訓練を受ける、座学を習う許可を頂きたいのです」
ああ、嫌だ。
これ以上強くなって彼女はどうすると言うのだ。
守られていればいいじゃないか。
ずっと泣いていればいいじゃないか。
何故彼女は立ち上がる。
何故、彼女は。
「……だから、嫌やねん」
小さく呟いた言葉に、グルッペンがピクリと反応した。少しも怖じ気付く様子もない。
国のトップ2と呼ばれる自分たちの前に立って尚、堂々と、ただ真っ直ぐとグルッペンの瞳を、自分の瞳を見つめる。
適わないって、わかっとるんや。
叶わないって、わかっとる。
だから、君を、
好きになりたくないんだ。
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秋人(プロフ) - パスワード掛けても公開して下さってありがとう御座います。本当に好きなお話なのでうれしいです。作者様に無理のないように過ごして下さい。 (2022年3月12日 23時) (
レス) id: 3a6567d6ac (このIDを非表示/違反報告)
よにん - 前に見かけてまた見たいと思っていてまた見れて嬉しいです。応援してます！ (2020年6月24日 15時) (レス) id: 3491a11aac (このIDを非表示/違反報告)
鬼雷 - 初コメ失礼します!少し前に見つけてひっそりと応援しておりました!ストーリーが凄く好きで先が凄く気になります!作者様のペースで頑張ってください!更新されるのを楽しみにしてます!完結まで追いかけます!頑張ってください! (2020年6月24日 0時) (レス) id: 15f01a3427 (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴(プロフ) - 茄子さん» 教えてくださりありがとうございます！！これからも頑張ってください！！他はもう素敵な話ばかりで読み入ります！もしもあったら聞かせてもらいます…！ (2020年6月17日 19時) (レス) id: c59a6d75f0 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - りんご飴さん» コメントありがとうございます！ありがとうございます！泣きます(；；) 手首を掴んだのはsypさんです！いえいえ、分かりづらかったかもしれません……。ごめんなさい(；；) 分からないところがあればジャンジャン聞いちゃってください！ありがとうございました(^_^) (2020年6月16日 20時) (レス) id: 8809630e87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茄子 | 作成日時：2020年4月6日 21時
