【マギ】理を越えて (ページ21)

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第十九夜ページ21

連れてこられたのは簡素な家だった。

男性がフードを取り、初めて彼の顔を見る。

意外とおっさ......ゲフンゲフン、ダンディな人だった。

「お前、今俺の顔を見て失礼なこと考えただろ」

「い、いやーそんなことないですよ、ハハハ」

我ながら嘘をつくのが下手だ。

「まぁいい、まずは自己紹介からだな。俺はアルハ、元騎士団だ」

「元、とは？」

「酒で体を悪くしてな、まあそろそろ歳だし引退して余生を楽しもうと思ってな」

「酒で体を壊すとか、だらしない人ですね」

この人...アルハさんに親しみを感じて軽口を叩く。

「いいから次はお前の番だ」

アルハさんにギロリと睨まれ慌てて自己紹介をする。

「うぇっ！？はい！わ、私はAと申しますっ」

口が回らなくて噛んじゃった恥ずかしい。

じーっ、と見ていたアルハさんが急に笑い出す。

「なっ、なんですか。人の顔を見て笑うなんて失礼ですよっ」

「おもしろいなあ、お前」

「え！？」

訳が分からない。さっきから何なんだこの人は

城下町を見るのを襟首掴んで邪魔して、地面に落として、挙句の果てには人の顔を見て笑うとか、本当に騎士団だったのか？

「さて、本題だ。本当に城下町を見に行こうとしたのか？」

アルハさんの目が急に鋭くなる。と同時に私の背筋もピンっと伸びる。

「はい。ふと思ったのです、王族なのに民達のことは何も知らない。だから、自分の目で人々の暮らしぶりを学ぶためにここに来ました」

私の言葉を吟味するかのように、考え込んでいるがどうだろうか......

「駄目だ。お前には危険だ」

「そんな...！侍女達は安全だと言っていました！」

侍女達はそんなことは一言も言ってないが説得するため。仕方ない。

「あぁ、普通はな。だがこの国は貿易が発達しているから、人の出入りが激しい。もちろん、人拐いも例外ではない。

まあ、お前のような容姿の珍しい奴は奴隷商人に売り飛ばされるのが普通だろうな」

「......っ！それでも！！私は行きますっ！！」

「駄目だって言ってんだろが！！」

いきなり怒鳴られて、ビクンッと体が跳ねる。

......そうだよ。アルハさんの言うとおりだよ。考えなしの私が悪いんだよ。

自分の情けなさにポロポロと涙が出てきた。それはしだいに量を増していき、ついには止められなくなった

「......はぁ"ー！
連れていってやらないとは言ってない！」

「ふぁい？」

「ただし！条件がある！」