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息を切らして走り辿り着いた先はしんと静まりかえっていた。



人混みを抜けようとするだけで精一杯だったけど、運が良かったな。



「疲れちゃった?」



心配して顔を覗き込むと、いつもの涼しい表情をしていた芥川くんが大丈夫だと首を振った。安堵してほっと息を吐く。



目的地に着いても繋がれた手を解こうとしない彼の優しさに、くすぐったい気持ちが湧き上がる。



もしかしたら、芥川くんも。



私と同じ気持ちかもしれないって、そんな都合のいい想像をしてしまう。



でも、もうそれが違っても私は躊躇わない。ただこの気持ちを伝えたい。知って欲しい。



「……っ、あの」

「場所を変えませんか」



遮られた言葉の続きを咄嗟に飲み込む。



「でも、もう花火始まっちゃうよ?」

「……行きましょう」



強い力で手を引かれて、私はそのまま流されるように足を動かす。



「……あの、芥川くん?」



歩調が早い。彼にしては珍しく焦っているようにも見える。どうしたんだろう。



「ちょ、ちょっと待って……」



私の声も聞こえないみたいに、どんどん先へ歩いて行ってしまう。



「芥川くん!」



いつの間にか痛いくらいに力が込められていた手を引いて強制的に歩みを止める。



私たちは人が行き交う場所に戻ってきていた。すれ違う人がチラチラとこちらを見ているのが分かる。



「……すみません」

「いいよ。どうしたの?大丈夫?」



子供に聞かせるような声で問いかけると彼は再び、けれどゆっくりと歩き出した。



「……太宰さん達が、付いて来ておられるようでしたので」

「えっ!?全然気付かなかった……」



なんてことをするんだ、あの二人。帰ったら問い詰めよう。



「ありがとう」

「……何か?」

「二人を撒いてくれたんでしょ?」

「……見られているのは、気分的に良いとは言えませんので」

「そうね」



珍しく嫌そうな顔をした芥川くんに、ふふっと笑いが零れた。



その時だった。



「えっ」



ポツリ、と頭に落ちてきた冷たい水に反射的に空を見上げる。



冷たい風がひゅう、と音を立てて吹き、同時に雨の匂いを連れてきた。



「……雨だ」

39→←37 〜中原中也side〜



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 芥川龍之介 , 文スト   
作品ジャンル:恋愛
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さくら餅(プロフ) - 紅玉さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!無事完結させることができて心底ほっとしております。私は貴方様のコメントにギュンギュンしました!笑本当にありがとうございました!! (2021年2月7日 15時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
紅玉 - 完結おめでとうございます!!!!尊いのと可愛いので私はギュンギュンしまくってました!!!!(ギュンギュンとはキュンキュンの進化系です!!!!) (2021年2月7日 12時) (レス) id: 835185f078 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 人虎に会いたい…。  by芥川 (2020年12月1日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 厳しいわ。 (2020年12月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
さくら餅(プロフ) - ☆天香☆さん» ありがとうございます!!すっごく嬉しいです!文ストはキャラクターひとりひとりが個性的で大好きなので、つい絡ませちゃいます笑コメントありがとうございました!! (2020年3月12日 21時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さくら餅 | 作成日時:2019年10月4日 16時

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