39 ページ40
突然の雨はやがて本格的に大粒に変わり、ざあざあと音を立てて降り注いできた。
十分前を控えた花火は打ち上げ中止になり、いっぱいだった人通りがまばらになっていった。
お祭りは楽しめたけど……私は。
私は、花火が上がったタイミングで芥川くんに告白しようと思っていたのに。
屋台の暖かい灯りが次々にふっと消えていく。
まるで神様がそれを制止しているみたい。彼に気持ちを伝えちゃいけないって、言われているみたい。
「……」
帰路を歩くのが辛くなって、とうとう足が動かなくなった。
少しだけ先を歩いていた芥川くんがゆっくりと振り向く。
「どうかされましたか」
「……ううん。ごめんね」
履いている下駄と雨に濡れた浴衣が鉛のように重く感じて、ここまで歩いてきた疲労が倍に感じられて苦しくて仕方ない。
「少し、時間をいただけますか」
「え……?」
無言で見つめられて、曖昧に頷く。すると彼は足早に近くのお店に入って行ってしまった。
「あれ、もういいの?」
「……見つかりませんでした。もう少し店を回っても良いでしょうか」
「うん。大丈夫よ」
ニコリと笑って返すと、芥川くんはまた足早に歩き出した。慌てて後ろを小走りで追う。
なんだか、凄く急いでるみたい。
「すぐ戻ります」
そう言って入って行って、またすぐに戻ってきた。今度も見つからなかったらしい。
でも、どうしても今日欲しいものだと言うので、見つかるまで付き合うことにした。
けれど、次もその次も見つからなくて、半ば諦めかけてきた頃。
「あったの!?」
「……っ、はい。ありました」
途中から走ってお店を回っていた私たちは息を切らしながらも、ついに探し物を見つけた。
小さなビニール袋を片手に下げた芥川くんに向かって良かった、と喜びを表すと彼も少しだけ微笑んでくれた。
「ふぅ〜……これでやっと帰れるね」
「いいえ。あとひとつだけ、付き合ってください」
「えぇ……!?まだ行くの……?」
拒否権はないらしく、がしっと手首を掴まれて連れて行かれる形になる。いつの間にか雨は止んでいて、私たちの背中を押しているようだった。
でも……いったいこれから、どこに行くんだろう。
69人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さくら餅(プロフ) - 紅玉さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!無事完結させることができて心底ほっとしております。私は貴方様のコメントにギュンギュンしました!笑本当にありがとうございました!! (2021年2月7日 15時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
紅玉 - 完結おめでとうございます!!!!尊いのと可愛いので私はギュンギュンしまくってました!!!!(ギュンギュンとはキュンキュンの進化系です!!!!) (2021年2月7日 12時) (レス) id: 835185f078 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 人虎に会いたい…。 by芥川 (2020年12月1日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 厳しいわ。 (2020年12月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
さくら餅(プロフ) - ☆天香☆さん» ありがとうございます!!すっごく嬉しいです!文ストはキャラクターひとりひとりが個性的で大好きなので、つい絡ませちゃいます笑コメントありがとうございました!! (2020年3月12日 21時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さくら餅 | 作成日時:2019年10月4日 16時