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暗く閉じた世界から2 ページ28

とりあえず、なすがまま身を任せようか。

周りのクラスメイトは俺達には目もくれず、それぞれ仲良しグループで固まっていた。たまに、「A、いってらー」だの、「ダイスケ、掃除サボんなよ」だの、クラスメイトが声を掛けてきた。


腕を引かれ、着いたのは美術準備室。
中に入ると、ソファーとテーブル。あとはイーゼルやキャンバス、何かの胸像が隅に置かれている。

「って、朝からずっと強引でごめんね?」

ドアを閉めながら、Aが言う。


「とりあえず腹減ったし、貧血で死にそうだから飯にしよーぜ。」

ダイスケがそう言って、テーブルに弁当を広げる。目に付いたのは、吸血鬼用と書かれたトマトジュース。

「それって...」

これが、俺が彼らに発した初めての言葉だった。

「俺は吸血鬼。マコトは雪男で、Aは妖狐。この学校にいる異形は俺らだけ。まー、仲良くしよーぜ」

後半は弁当の唐揚げを頬張っていて、モゴモゴとしていた。
...頭がついていかない。

「俺ら《だけ》ってのも、おかしな表現だよな。普通こんなに集まんねーだろ」

マコトも弁当を広げつつ、「ほれ、冷たいだろ」と、俺の頬(頭は抱えているので、立ち尽くす俺と座ったマコトとの目線が同じになった)を触る。


「あんまり深く考えないで。私も小学校の時にマコト君の学校に転校してさー、あの時は耳も尻尾も隠せなくて苦労したよー。ナオキ君もそれじゃあ全然隠せないでしょ?大変だよねー」

「てかナオキ全然喋らなくない?大丈夫?」

「お前らが勢い良すぎなんだよ。俺ん時もそうだったろ。反省して次に活かせよ脳みそ凍ってんのか?」

「グエー、ダイスケひどすぎぃ...」


今までの転校と状況が違いすぎて、上手く飲み込めない。
そして、気付く。自分の出し方を忘れてしまっていた。


「...無理しないで。色々あったと思うけど、ゆっくりでいいから、楽に過ごせるようになろ。(妖狐)にはナオキ君(デュラハン)の苦しみは分からないけど、少なくとも、今までみたいな辛いことはないって約束する。」

真っ直ぐ俺の目を見てそう言ったA。
俺は頷くことしか出来なくて、三人と同じように座って弁当を広げる。
それでも充分伝わったのか、隣のダイスケが俺の肩をポン、と叩いた。

ーーーーー

ナオキ君が転校してきてから、しばらく経った。
最初は全然喋らなかったけど、段々と口数が多くなってきていた。

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作者名:名無しの夢女子 | 作成日時:2019年1月8日 22時

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