十六 ページ17
「まあ、あたしは書きたいものを自由に書いているだけだからね」
それが何でもないことだ、と言わんばかりの態度だ。
藤崎さんは、自由に書く……。
わたしは、書きたいものを書く、というよりどんなジャンルでもよりいいものを目指して書く。
つまりわたしは、
『
をどんな作品でも出したいから書くんだ。
クラスメイトがどんな顔をしようと、わたしは小説を書く。
「桐原さんも作家になりたいんだ?」
藤崎さんは興味津々、といった顔でこちらを見ている。
「うん。叔父さんからの影響は強いよ」
「あたし、その叔父さんのやつ、読んだことあるかもしれない」
「嘘!?」
「多分、だけどね。日常振り返りエッセイ……日記みたいなものだったと思うんだけど」
「じゃあ、多分そうだ」
もともと叔父さんは、自分一人で何でもできてしまう、完璧と言ってもいいくらいの人間だった、
でも叔父さんだって人間。
いくら完璧だと他人から言われても、本人は自分のことを完璧だと思ってはいなかった。
そこで、今までやったことがないこと――つまり小説を書いた。
叔父さんは、自分の限界を知っていた。
書いた小説が悲惨なものだったのだ。期待を裏切った、と言われてしまう。
そして周りは叔父さんに失望のまなざしを向けた。
これは自然な流れと言えばそうかもしれない。だけど。
本当にそれでよかったのか?
叔父さんは、それをずっと考え続けた。
いつもニコニコしていたおじさんが、毎日のようにイライラしているのをわたしは見ていた。
見ていただけだった。
小さい子どもだから何もできないし、周りとの評価のギャップで悩むことなんて知らなかった。
そして叔父さんは、一人で修行すると言って、家を出ていった。突然に。
今、わたしは叔父さんに何も言うことができない。
いや、声をかけてはいけない気がするんだ。
――叔父さんは、わたしが小説を書いていることを知っているから。
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うたは(プロフ) - 陰月。さん» わざわざ返信ありがとうございます。ううん、なんでしょう。私からすると多いなあという印象なのですが、陰月。さんが書いていて心地よいならこのままでも、と思います。指摘した身だというのに申し訳ございません。これからの御活躍お祈りしています。 (2019年2月17日 17時) (レス) id: 14b840c6a0 (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - うたはさん» 今更の返信すみません。やはり開業が多い方が読みやすいでしょうか?少し多めにしてみます。わざわざありがとうございます。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 83a189451f (このIDを非表示/違反報告)
うたは(プロフ) - はじめまして。このお話好きです。が、すみません、文の途中での改行が些か読みづらく感じました。これからも応援してます。頑張ってください。 (2019年1月20日 23時) (レス) id: 87a0c9cf89 (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - コノハ【心葉】さん» コメントありがとうございます<m(__)m>気づくのが遅くなってしまいすみません(-_-;)夢が小説家、とはっきりしていていいと思います。 (2018年12月29日 19時) (レス) id: 83a189451f (このIDを非表示/違反報告)
コノハ【心葉】 - 私の夢が小説家なので、なんか、元気付けられました。 (2018年11月14日 17時) (レス) id: bac5683ead (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陰月。 | 作成日時:2018年3月22日 16時