引き金 ページ41
「ちょっといいか」
群れから離れて一人でワインを嗜んでいると、ある男に話しかけられた。
「あー、セイバーのとこの……オルガ、とかいったっけ」
お酒を片手に私に話しかけてきたのは
何度か顔を合わせることはあったがまともに言葉を交わすのは、これが初めて。
「あーどうだ。この後、ちょっくら抜けてどっか行かねェか」
顔を赤らめ、私から少し目線を外した彼は照れたように頬をかく。
酔いの回った脳では自分が口説かれていると理解するまでに少しばかり時間がかかった。
いわゆるナンパなんてものは久しぶりで、驚きからつい黙り込む。
「ほぉ、これは興味深い話を耳にした。抜け駆けはあまり感心しないな。オルガくん」
オルガの背後からノソリと現れたのはもう1人の巨漢。
ラミアのジュラ。
どうやら私は大会随一の巨漢二人に口説かれてる様子。
「ジュラさんよぉ、女の趣味に関しては気が合うようだな」
「しかしオルガくん、ここは上の者に敬意を評して潔く手を引く気は無いかね」
二人のちょっとした言い争いを聞き流しながら辺りを見渡す。
ふと、近くのテーブルで巨乳に囲まれたラクサスが目に入った。
それはそれはあらゆる所で肌と肌と密着してまるでどこかの王族の宴のよう。
振りほどかないあたり、満更でもなさそうね。
ラクサスを囲う女達を物色していたら、一人の女と目が合った。
彼女は怪しげに目を細めて笑うと、絡みつくように抱いていたラクサスの二の腕にキスを落とした。
まるで
しばらくして、ようやくこちらの存在に気づいたラクサスと視線が交わる。
私は何事も無かったかのように、視線をラクサスから目の前の二人に戻した。
そう。そっちがその気なら――……
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作者名:梅水晶 | 作成日時:2022年12月31日 16時