ガイアスラ ページ39
「なぜ、その異名を……」
「�爛�イアスラ�瓠帖賃臙呂鯀論�、築き慈しむべき大地の守護竜という存在でありながら破壊を続けた……まさしく�狹刑勠瓠帖帖�
私の脳裏に思い浮かぶ一匹のドラゴン。
唇を噛み締める力が強くなる。
「群れを嫌い、孤独を好む故に何処にも属さなかった孤高な地の支配者だったはずの奴と何の繋がりが？」
開きかけた口を噤んだ。
全ての言葉を簡潔に言い表せられる言葉がどこにも見当たらない。
古傷がズキリと重々しく傷む。
「ガイアスラ……この世で最も憎いドラゴンの名」
「憎んでいるはずのドラゴンの技を継承しているとは……とんだ矛盾だな」
「戒めよ。それ以上の理由はない」
相変わらず私を見下ろすその目を睨み返す。
突然、ドラゴンが足を折り曲げ犬のようにその巨体を伏せた。
「やめだ。その名を聞いて貴様らを食う気が失せた」
完全に戦闘を放棄したその口から語られたのは私の憎きドラゴンの話。
“かつてはその名の通り
地を愛し、地に愛されていたドラゴンだった。
だが、いつしかまるで呪われたかのように破壊を繰り返しては海を、空を、大地を、生物を滅ぼし始めた。
奴と一度だけ衝突した事がある。
約数十頭のドラゴン相手に奴たった一頭で我とたった数頭を残して大地と共に滅ぼした……
天地を喰らい災いを齎す奴の力は
我ら同胞でも抑えきれないほどに
強大であり脅威だった――……”
今ここが戦場という事も忘れ、無防備な状態でただただ黙って聞き入っていた。
“天地に災いを齎す奴を
戦争に参戦させなかったのは正しかった。
どのみちあやつがどこかに加勢すれば人間どころか同胞、そしてこの陸でさえも消滅していた”
ﾋﾟｶｯ
なんの前触れもなく突然、光出したドラゴンの体。
ようやく我に返り、構える。
しかしドラゴンは反撃するような素振りも見せず、変わらず淡々としていた。
「どうやら、我の出る幕はもう終わりのようだな。貴様のその恨み。晴れると良いな」
ドラゴンは最後にそう言い残し、光とともに呆気なく闇夜に消えていった。
目の前の脅威は去ったはずなのに、私の中には未だ拭えない不快感があった。
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作者名：梅水晶 | 作成日時：2022年12月31日 16時
