天災 ページ38
「“
ドドッドドッドドドド！！
ドラゴンと一線を画すように地中から現れた何十メートルにもわたる高さの土の壁。
ゴォオオオオ！！
その瞬間、耳を塞ぎたくなるほどのけたたましい咆哮が響き渡る。分厚い盾越しにも分かる、本物のドラゴンの威力。
創り出した地の盾は咆哮により外側からじわじわと破壊され、削れた盾の破片が後方の魔導師達に降り注ぐ。
「ちょちょちょ！瓦礫が飛んできてる！」
「武器を持ってない者は退避ー！！」
「Aさん！一人で突っ走っては危険だ！僕の指示に、」
「死にたくないなら散って。足でまとい」
このギルドには恩もある事だし、最前は尽くすつもり。
けれど、ドラゴンを相手に全員を守れる保証もなければ余裕もない。
他人のために自分の命をかけられるほどの善人でもないしね。
ここは潔く手を引くのがお互いのため。
「Aくんの言う通り、私達がここにいても足を引っ張るだけだ。ここはAくんに任せて、他のドラゴンの始末に回ろう」
群衆の中の誰かが言い放った。
「Aさん…本当に、一人で大丈夫ですか」
大勢の足音が遠ざかっていく中、ただ1人茶髪の色男が心配そうな面持ちで私を見ていた。
何も言わず一度だけ頷いた。
彼はそれを確認すると、足早にこの場を去っていく。
「諦めろ愚かな人間よ。主らが人間である限り我らドラゴンには勝てぬ」
連日の戦闘で大技を酷使したせいで魔力、気力共に長期戦できるほどの余力はない。
小技を繰り出して時間を稼ぐか、残りの魔力を振り絞って大技を連発するか。
「滅竜奥義――……」
わずか数秒……悩んだ末に出した答え。
「“
空を割るような大きな光が地上から空へと一直線にのぼる。
辺り一帯に地の割れる音が響き渡り、揺れは徐々に大きくなっていく。
不意に見えた驚きに見開いたドラゴンの瞳。
「この技は…�狹刑劼痢宗宗牒瓠�
「……ッ、」
聞き覚えのある単語に私の攻撃の手が緩んだ。
大地の揺れは徐々に弱まっていき、空へと昇る巨大な光の束もやがて夜空へと吸い込まれるように消える。
それとは裏腹に驚きと不快でザワつき揺れ動く心臓。
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作者名：梅水晶 | 作成日時：2022年12月31日 16時
