第二の祭 ページ34
その後、約束どおり王国からルーシィを取り戻して平和に全てが終わる―――
はずだった。
裏で別行動をしているナツ率いるルーシィ救出班からの信号弾を誰も見ることはなく、そのまま王宮の広場に集められた私達を始めとした大会参加者達。
初めて顔を見る王様から直々に放たれた言葉は実に耳を疑うものだった。
「エクリプス計画…竜王祭…ドラゴン…」
大会の後で余韻に浸っている参加者達は意気揚々と高らかに雄叫びをあげる。
群衆から少し離れたところで話を聞いていた私とラクサスは顔を顰めた。
群衆は恐らく事の重大さに気づいてない。
ドラゴン一頭を始末するのにどれほどの犠牲を払う必要があるのか。
どうやら、このまま何事も無く平和に帰れるわけじゃなさそう。
「さて…生きて帰れるかな」
ボソッと呟いた声を隣人の大男が聞き逃すはずもなかった。
「生きて帰る。その為に戦うんだろ」
私を真っ直ぐ見据える鋭い目。
全てに背を向けてその瞳に飛び込めたらどれほど幸せだろう。
「逃げ出してみない？2人で」
返事は分かりきっているけれど、冗談交じりそう聞いてみた。
正直なところ、半分本気だけど。
「もう二度と家族に背を向けたりはしねェ」
よく分かっている。
彼の正義感がどれほど強く、頑固であるか。
きっと私がここで全てを投げ出し背を向けて逃げ出したとしても、彼は自分の正義に従いここに残ることを選ぶ。
そういう男なの。
「お前だけは死んでも守る」
私の頭に軽いキスを落とす。
2人になるといつもと打って変わって酷く私を愛してくる。
だからこそ愛おしく感じてしまう。
ラクサスという男を。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：梅水晶 | 作成日時：2022年12月31日 16時
