口直し ページ22
後味の悪い試合の口直しをしようと出店を1人で見物していると突然ザワザワとフロアがざわつき始めた。
女の黄色い歓声から男の興奮した雄叫び。
面倒な何かがそこにいるのは確かだった。
面倒事だけは避けたい。
つまみだけ買って早急にこの場を離れようと踵を返した。
だが、神はそう易々と見逃してはくれないようで。
「MPFを破壊した
「うーわっ、見ろよローグ。マジモンのAさんだ」
振り返った矢先、
「立ち止まらず通り過ぎてくれると嬉しかったんだけど」
チュロスを頬張りながら郡の筆頭である目の前の女、ミネルバを一瞥し天を仰いだ。
「先程のエルザといいお主といい。なんじゃその目は?何か気に食わぬ事でもあるのか?敗北の悔しさから反抗的になるのは見苦しいぞ」
視線を天から目の前へと戻した。
人を煽るのがさぞかしお上手なことで。
「妾はルールに則り公平に試合をしただけよ」
「公平ね。別に兎や角言うつもりはないよ」
一旦、冷静になると分かることもある。
私は勝敗に関してはさほど興味は無い。
負けたからといって微塵も悔しくも悲しくもない。
ただあの時、傷だらけのルーシィを見て何かが湧き上がってきた。
殺気と言えばそれまでだが、殺気とはまた違う別の何かが私の中に渦巻いていた。
「貴方が言うそのー『ルールに則った“公平”な試合』ってやつ?いつかできるといいね」
身体中に渦巻く何かをぶつけるかのように、立ち塞がる彼らを押し退け強行突破でこの場を後にした。
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作者名:梅水晶 | 作成日時:2022年12月31日 16時