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交渉成立 ページ3

「……あぁ、もしかして一日目の失態を気にしているのならまあ……ご愁傷さまだけど、別にギルドの誰もそれは気にしていないと思うけど」


思い当たる節は一つしかなかった。
それは一昨日行われた、聖十大魔道の称号を持つ蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のジュラと彼との一戦。


彼も元・聖十大魔道の称号の持ち主だった為 、序盤こそは接戦だったものの、その均衡は徐々に崩れ、最終的には場内の中央で一人悶えた末にダウンし、彼は無様な敗北を喫した。


観客達だけでなく、ギルドの皆も困惑していたのを覚えている。



「ゴホンっ……それは、すまなかったと思っている」


「いや、別にいいのよ。それはそれで面白かったから」


私からするといつも飄々とクールぶっていたミストガン(中身は別人だけれど)の無様な姿が見れて抱腹絶倒だった。



「でも今の話は、また別かな」


「……頼む。これでは俺がギルドの足を引っ張る上に、迷惑をかけてしまう」


さっきより深々と下がる頭。


「無責任……」


私の口からポツリと出た性根腐った言葉に唐突に頭が上がった。

一部分しか見えない彼の真剣な眼差しから圧を感じる。



「本当に悪いと思っている。だがこれが俺にとっても、君達妖精の尻尾(フェアリーテイル)にとっても最善な方法なんだ」


本当はこのまま大会が終わるまで観客に徹するつもりだったけど。


「……分かった。後にギルドメンバー以外の参加がバレて処分とか貰うのも面倒だしね。その上、それがお尋ね者なんて知られたら……ギルドの面目丸つぶれよ」


「……悪い」


「ん。じゃ」



全て話はまとまった。
元来た道を戻り始めようとした時、再び彼の声が私の足を止めた。




「気にならないのか」


「何を……?」


「俺がなぜミストガンに扮装していたのか」


「あぁ――…」






「私、面倒な事には首突っ込みたくない主義なの」





そう言って笑い、再び背を向けると
彼が再び声をかけてくることはなかった。




.

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作者名:梅水晶 | 作成日時:2022年12月31日 16時

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