機密情報 ページ12
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均衡が崩れる事なく、ラクサスが一方的に殴られ蹴られるだけの茶番のような試合が続いた。
ラクサスならこんな窮地に立たされたとしても、状況を一変させるような技を一度くらいは打つはず……それなのに、何の動きも見せない事に疑問を持っていた。
まるで台本を元に作られているような……
直感で感じた違和感がずっと引っかかっていた。
拭い切れない違和感は口に含んだ酒を不味くする。
「イワンの野郎……」
周りは悲鳴や驚嘆の声で溢れかえる中、背後から聞こえた苦し紛れの小さな声を聞き逃さなかった。
「イワンを知っているの?」
眉を寄せ、周りから少し離れて試合を見ていたガジルを見る。
彼の瞳は焦りを含んだように揺れた。
イワンについて何か知っていそうなガジルを見る目が徐々に鋭くなっていく。
「ちょっと来い」
バツが悪そうに顔が歪むガジルに連れられ、観衆から少し離れた応戦席の裏に来た。
黙り込んでいるガジル。
周りを注意深く確認すると、静かに口を開いた。
「話すと長くなるが、変な誤解はされたくねェからな――…」
彼の口から語られたのは知らなかったギルドの秘密。
マスターから頼まれ、ガジルが二重スパイをしていたこと。
イワンが
その為の戦争資金としてラクサスの体内に埋め込まれた滅竜魔法の
ざっくりとした説明だったが、大体の事態の把握はできた。
そしてこの大会での今までの動向の意図も。
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作者名:梅水晶 | 作成日時:2022年12月31日 16時