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伏黒「…いっそ、俺が禪院の当主になれば近くに置いとけるのか…?」



いや、次禪院家に廻って来んのは200年後だったな。






高専内の、救護室近くの一室。



万全を期して封印を重ねた拘束具を眺めながら、そんな事を呟く。



隣に座る釘崎が、ぎょっとし「おい、伏黒、大丈夫か…?」とさすがに心配した。



そんな心配も虚しく、伏黒は放心した様子で葵夜を眺め続けている。





───葵夜っ!おい!大丈夫か?!俺お前に謝りたい事がっはァっ…!!





あの時の虎杖のように呼びかけてやれば、お前は俺を殴りながら目を覚ましてくれるのか。



伏黒「…いや、お前なら背負い投げか」



ふっと笑い初めて出会った日の事を思い出す。



釘崎「私がお前を背負い投げしてやろうか??」



情緒の分からない伏黒が釘崎は気持ち悪くて仕方がなかった。









しばらく沈黙が流れる。



残り数分で面会時間が終わる。



しかし面会の監督である伊地知は五条と共に虎杖の遺体の処理へと向かってしまった。






誰もいない今なら、この封印を解いて葵夜を攫える。



普段の自分からは考えられない発想に驚きながらも、自らの内に秘めた本性に妙な納得を覚えた。


そういえば俺は五条悟の教え子だったな。






どこか考え込んだ様子の2人。



それも死を悲しむような、そんな表情は一切なく、



魔が差したように目を座らせて葵夜の事を見つめていた。







伏黒「“七竃”は、横暴で陰険で、性格が悪いんだってな。」


釘崎「…耳にタコよ。こっちに来てから道行く呪術師に言われる。」


伏黒「特級呪詛師。さすがだな。」


釘崎「そうね。そんな悪人の金品の1つや2つ、取った所でバチは当たらないでしょうね。」







首から下がる翡翠の装飾品。


封印される時に伏黒が付けたものだ。


葵夜が加茂家に移送されたあと、そのネックレスのみが五条家の呪物庫に保管される。



釘崎は重い腰をゆっくりと上げ、葵夜の元へと歩いて行った。




伏黒「……共犯だな。」


釘崎「共犯ね。……聞こえてるかどうか知らないけど、お互い葵夜に会いに行く日にこっそり付けていくわ。返して欲しくば早く目を覚ます事ね。」



そう言い放ち葵夜の首に手を回す。


女子高生という事もあり慣れた手つきて引き輪を外し、目を閉じきった葵夜の顔に持ってくる。




雌黄色の翡翠が彼女の瞳のようにきらりと輝いた。






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作者名:佐藤ななな | 作成日時:2021年9月14日 13時

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