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五条｢ちょっと、今感動のシーンじゃない？｣
家入｢この世は感動なんかよりも優先しなきゃいけない事で溢れてるんだよ。さっさと出てきな。｣
追い払うように部屋から男どもを退出させ、先程まで虎杖が死んでいた台へ乗せる。
金属製で冷たかったのか、呻き声を上げながら目を覚ました。
家入｢…おはよ｣
彼女は私の事を覚えているだろうか。
学生時代、何度も補助監督をしてくれた大人も3日と覚えている事ができなかった葵夜。
幼い頃から近くにいた五条ならまだしも、たった3年、同じクラスだった女の事なんて大して記憶に残らないだろう。
葵夜｢…えっと……おはよう…？｣
大丈夫。
大丈夫だ。
家入｢家入硝子だ。高専で女医をしてる。｣
見た目が変わったんだから、仕方ない。
そう自分に言い聞かせて、起き上がる彼女に服を貸してやる。
この感情も、
彼女への想いも、
大丈夫。
また最初からやっていけば。
すると彼女は悲しそうに受け取った服を握りしめた。
葵夜｢え、やだ。しょーこ…私の事忘れちゃったの…？｣
家入｢え｣
ほら、私だよ、七竃。いつも悟の近くにいた。嘘、覚えてないの？悲しすぎる…。
プチパニックになったらしい葵夜が自分を指差しずいと顔を近付けてくる。
服をバサバサと落として、手を掴もうと手を伸ばす。
その焦った顔が面白くて、
可愛くて、
勢い余って抱き着いてしまった。
いや、女同士でのハグなど、LGBTが浸透しつつある世の中でもさほど意識されないスキンシップだろう。
でも、私が彼女に向ける感情を考えたら充分問題な訳で。
今度はこちらが焦って葵夜から直ぐに離れた。
家入｢…ごめん。｣
すると嬉しそうに笑ってこちらの顔を覗き込んだ。
葵夜｢どれに対して？｣
家入｢いや、色々と、うん、…………覚えててくれたんだな｣
葵夜｢当たり前だよ。私にとって高専は人生初めての学校だったんだから。…悟も傑も、硝子も、私の大事なクラスメート｣
その後に超小声で｢まぁ健人と雄の事は最近まで忘れてたんだけど…｣と呟いていた気もするが、スルーしてもう一度服を渡す。
家入｢…五条も夏油も、クラスメートなんかじゃ満足しないと思うぞ｣
もちろん私も。
からかい半分で言ってみるも、｢ん？じゃあ友達！｣と予想通りの返しをされてしまった。
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続く (更新停止中)
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作者名：佐藤ななな | 作成日時：2021年9月14日 13時
