#60 出来ること ページ39
(苺花side)
「ねえ、母様」
「なんだ、苺花」
「…一は生きていた時に悔いはないのかな」
「……どう、だろうな」
一のあの表情、初めて見たかもしれない。
なんていうか懐かしそうに…それでいて辛そうな表情。
…それを見るとやっぱり一は生きていたいのかと思ってしまう。
今となっては死神として生きている。…死んでいるのにこの表現は分からないけど。
私みたいな尸魂界で生まれた者と一みたいな現世で生まれた者は前提が違うって。
最初から尸魂界で生きている…母様は人生一回目だと例え、現世で生きていた人間は人生二回目だと言っていた。たぶん当時理解しづらかった私に簡単に説明するために話したんだろう。
それに前に言っていた心配してくれる家族の大切さのことを語っていた。
もしかしたら、自分の経験を踏まえて伝えていたのかもしれない。
…それを考えたら、アイツは優しい人なのかもしれない。いや実際優しい人なのだ。
なんだかんだ言って私について来てくれたり、私が落ち込んでる時は何も言わず傍に居てくれた。
小さい頃から、ずっと。…アイツが生きていた頃は1年に1度ぐらいしか会えなかったけれど、同じように接していたのだ。
「…1度、一に聞いたの。死んで悔いはなかったのかって。そしたらなんて言ったと思う？」
「なんて言ったのだろうな」
「いきなり背中を叩かれて、『死ななかったら今、お前と組んでねぇだろ』だって。なんか答えをはぐらかされた気分だったけど、一なりに前を向いてるんだなって思ったの」
「…一らしいな」
だから先程の反応に少し驚いた。
前を向いていたと思っていたから。
…誰しも早々に前を向けるわけはない。
一も心のどこかで心残りだったのかもしれない。
「…私がやれることってなんだろう」
「…一の隣にいることじゃないか？私が決めることではないが、今1番一に近しい人物は苺花だと私は思う。苦しい時悲しい時そばに居てくれる人がいるだけで違うと思うしな」
「！そっ、か…そうだよね。ありがとう、母様！」
「私はなにもしとらんぞ」
一の隣にいること。
私が出来ることは確かにそれくらいかもしれない。
とにかく私が出来ることをする。それだけなのだ。
ｰｰｰしかしその後、アイツから少しでも離れたことを
後悔することを今の私はまだ知らない。
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ルル - 新しい感じのやつだと思います。殆どが原作を改変している話が多いので、ちょっと新鮮で面白かったです (2019年6月2日 1時) (
レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
ラハル - すごく面白かったです！これからも頑張ってください。続き楽しみにしています！ (2017年1月31日 10時) (レス) id: a67c8f74a0 (このIDを非表示/違反報告)
りゅー - 続きが見たいです！ (2016年12月14日 23時) (レス) id: 8e76876a71 (このIDを非表示/違反報告)
リズ - 続きが楽しみです！ (2016年11月14日 17時) (レス) id: 9929c522bf (このIDを非表示/違反報告)
リズ - 更新がんばってください！ (2016年10月7日 17時) (レス) id: 9929c522bf (このIDを非表示/違反報告)
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