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#59 当時の出来事 ページ38

今の今まで忘れていた…というより忘れかけていた。
…前に言った通り、俺は生前のことを少しずつ忘れていっている。
だからそれに従って何処で死んだかもあやふやになりつつあるのだろう。
そうだ、この道で交通事故にあった。
…なんで起こったんだ?
俺は…誰かを庇って亡くなった…?
じゃあその相手は一体誰なのか。
思い出したくても思い出せない。
…気にしないのが妥当なのかもしれない。

「…あのさ父さん。俺が交通事故にあったって。…亡くなったって聞いた時、どう思った?どう感じた?」

「一…」

「正直に答えてくれ。俺にはもう殆ど記憶がないんだ」

手に力が入る。
眉を寄せている俺に父さんはまるで自分のことかのように辛そうにしていた。
なんで、そんな顔するんだよ。
俺がさせているのは重々承知だ。
でも親だからってそんな自分のことみたいに考えないでくれよ。
……辛く、なるだけだろ。

「…お前が亡くなったって聞いた時、これは何かの間違いだって思った。嘘だって誰かに言って欲しかった。けど、現実を受け止めるしかなくてよ。……でも、お前が交通事故にあった理由を聞いて少し誇らしく思った」

「…理由?」

「本当は反対側に渡ろうとした小さい女の子に向かって車が信号無視して突っ込もうとしていたんだ。それをいち早く気づいたお前が身を呈して守ったんだ」

ストン、と胸に落ちていく。
あぁ、そうだったのか。
俺は…人を守って死んだのか。
……今まで悩んでいたことが晴れたように心が軽くなったような感じがする。

「…ありがとう、父さん」

「でもまさか死神として再会出来るとは思ってなかった」

「…俺もだよ」

「さて、帰るとするか!一」

「………うん」

もう一度この道を見渡す。
ここが俺の死んだ場所。
少し違えば俺は生きていたのかもしれない。
でも、この出来事があったから俺は死神になっている。
どれが正解でもないし分からない。
でも俺が辿っていく道が答えになるんだったらとことん進んでやろう。

「一〜!行くぞー!」

「分かってるよ!」

俺にはそれしか方法はない。
父さんの後を追いかけるようにこの場を去ったのだった。

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ルル - 新しい感じのやつだと思います。殆どが原作を改変している話が多いので、ちょっと新鮮で面白かったです (2019年6月2日 1時) (レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
ラハル - すごく面白かったです!これからも頑張ってください。続き楽しみにしています! (2017年1月31日 10時) (レス) id: a67c8f74a0 (このIDを非表示/違反報告)
りゅー - 続きが見たいです! (2016年12月14日 23時) (レス) id: 8e76876a71 (このIDを非表示/違反報告)
リズ - 続きが楽しみです! (2016年11月14日 17時) (レス) id: 9929c522bf (このIDを非表示/違反報告)
リズ - 更新がんばってください! (2016年10月7日 17時) (レス) id: 9929c522bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:彼方 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2016年9月13日 8時

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