JUMP短編集〜十人十色の恋レシピ ６〜

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　悩むこと三秒。

　じわじわ近づきつつある慧にぃの顔を(正確には顎を)あたしはグイッと力の限り押した。




「いでっ！なにするんだよ！」

「なにするはこっちのセリフじゃアホめっ！どさまぎで乙女の初キッス奪おうとするな！」

「お前が伊野尾伊野尾言うからサービスしてやったんだろ！」

「そんなんサービスでもなんでもないっ！はじめてのちゅーは好きな人とじゃなきゃイヤッ！」




　叫んでから気が付いた。

　慧にぃ…なんでそんな、苦しそうな顔してんの…？





「はっ…そーかよ。んじゃいつか伊野尾に会えたらプレゼントしろよ、初ちゅー。」

「え？慧にぃ？」

「くそっ…アイドルなんか影でなにしてっかわかんねーのに…」

「えっと…もしもし？」

「ファンのことだってきっと金ヅルくらいにしか思ってないのに俺よりそっちがいいとか…」

「いや、伊野尾くんはそんな人じゃないと思うけど…？」




　って、問題点はそこじゃなくない？

　今のはえーっと…もしかして？




「慧にぃ…つかぬことを伺いますますが……もしやそれは、“あたしのことが好き”とか、そーゆーことですか…？」

「それ以外のなんだってんだよ！いつもそうやってケムに巻いてツルツル逃げやがって！」

「ケム？いやおふざけまくってるのは慧にぃじゃ…」

「俺はお前に合わせてやってたんだよ！こんだけ近くに居れば余計な虫はつかないだろうと思ってたらアイドルなんかに入れあげてっ！」

「近くにってアナタ…月にいっぺんくらいしか会ってませんけど？」

「誕生日もクリスマスも正月もバレンタインもホワイトデーも花見も花火大会も海もっ！イベントっぽいのは全部一緒に過ごしてたろ！」

「そ、そう言われればそうでした…」




　うん、そうだった。

　全部慧にぃが誘ってくれるから、あたし一度も慧にぃ以外の男の子と、ロマンチックなイベントに参加したことないや…





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