JUMP短編集〜十人十色の恋レシピ ６〜

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　あたしがおふざければ間違いなく慧にぃもおちゃらけて、そのあとは兄妹のよーなじゃれあいが始まる。
　それが予定調和なはずなのに、今夜は違った。




「俺は、“そんなに伊野尾がいいのか”って聞いてるんだよ。」





　ベッドに仰向けに転がるあたしの両脇に腕をついて、いつになく真剣な慧にぃ。

　てゆーかこれ、床ドンじゃね？
　いや正確にはベッドドン？




「あの…質問の意図を計りかねるのですが…」

「………チッ。」



　舌打ちひとつして、慧にぃはあたしの上からサクッと降りた。

　でも“冗談だよバーカ”みたいないつものセリフは聞こえなくて、沈黙にドキドキする。




「慧にぃ…？」



　向けられた背中に呼び掛けると、「はぁ〜」って長々ため息を聞かせてから…




「伊野尾くん、って呼んでもいーぞ。」

「はい？」

「モノマネしてやるって言ってるんだよ。録画したいんだろ？」

「えっ？マジっすか！？」




　大喜びでスマホをかまえ、「伊野尾くーん♡」と呼び掛けると、またもや見事なアイドルスマイル。




「ねぇAちゃん、俺のこと好き？」




　はぁう！
　その質問は反則でしょー！




「すっ…好きですっ！」

「ありがと。俺も好きだよ。」




　きゃあああ！
　これ録画ボタンちゃんと押したよねっ！
　永久保存版だーーー！

って、ちょい待てぃ！




「け、けーにぃ？モノマネはいいけどこの手はなに…？」

「慧にぃ、って誰？俺は伊野尾だよ？」



　抱き寄せられてパニック！

　ちょっと待ってこれなにが起きてるの？




「こんなに可愛く“好きです”なんて言われたら、嬉しくて止まれないよ…」




　ぎゃああ！
　待って待って待って！

　顔を近付けるな伊野尾っ！
　そんな安易にあたしのファーストキッスを奪おうとするなぁあ！




「どうしたの…？俺のこと、好きなんでショ？」

「そっ、それはそうだけどあのっ…」

「じゃあいいじゃん。ほら、目を閉じて…」




　ああうどうしよう！
　憧れの伊野尾くんとちゅーするチャンスなんて二度と来ないかもしれないしいっそやっとく？

　いや待てこれは慧にぃだぞ？
　ってことはあたしは慧にぃと初キッスか？
　慧にぃのこと好きなんだからそれも問題ないっちゃないけど…






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