春夏秋冬2 (ページ25)

今日:17 hit、昨日:26 hit、合計:30,700 hit

＊* ページ25

.

「やめてよ、もう…なんか調子狂うから…！」

「入社した頃は俺も正直枕やってんのかなって思ってた。尋常じゃないほど差つけられて、まともに営業回ってる俺がバカバカしく思えてきてすっげー悔しかった。」

「…そうだったの？」

「だけどずっと一緒に仕事してきてわかったんだよね。毎日遅くまで残って相手の出方を想定して事細かい企画書作ったり、仕事のパートナーとしてじゃなくて一人間として相手を理解して受け入れる姿勢が響くんだろうなぁって。
全てAの実力なんだって思い知らされて良い意味で諦めがついた。俺はサポート役に回ろうって」

「何言ってんの！巧見には巧見の良さがあって、さっきだって大きな契約完了させて、私にはとてもじゃないけど無理だった。
私のサブに回ってもらってる案件だって今は異動期で人が足りないからで…」

「いいって、俺に気遣うなよ」

「それに枕じゃないけど、実際に寝たことも確かにあるし…」

私の言葉に驚きもしないで笑ってる。

「せっかく褒めてやってんだからそういうのは黙っとけよ(笑)」って。

同期だからこそ、同じ部署だからこその悩みが、巧見にもあったんだと初めて気付かされた。

「あぁーこんな湿っぽい話はもうやめようぜ！
飲もう飲もう！今日は奢るよ！」

「…え？いいの？」

「うん」

「珍しい！！
じゃあ、お言葉に甘えてビール追加で！」

さっきまでチビチビ飲んでたビールをグッと飲み干して、

「すみませーん！同じものを！」

おかわりを注文した。

「なんか、急にピッチ上がったな」

「巧見の奢りならたくさん飲まなきゃ損だもん！」

「いや、いつも奢る気ではいるんだけどA奢られるの嫌うじゃん。私だって稼いでるんだから〜って」

「…そうだっけ？」

「うわ、無意識(笑)

ん、まぁいいや。今日は何でも頼めよ！」

確かに巧見に奢られるのはなんとなく気が引けて、だって同期だから。対等に居たいって思うから。

これからも、ずっと、私たちの関係は〝同期〟以外の何ものでもない。

.