Torenia Fournieri -2-

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『これ、呑める？』




ようやく戻ってきたニカが、ぼんやりと夜景を見つめている私にそう問い掛けてきた。




私が振り向くのとほぼ同時に テーブルにそっと置かれたのは、見覚えのある銘柄の日本酒。




「…えっ、」




『俺のオススメなんだけど…』




福島に販売店を構えているこの銘柄は、スーパーやオンラインショップでも入手困難だから、オークションサイトだと少々値が張ってしまう。




何故それを私が知っているかというと、何を隠そう私の実家が福島にあるからだ。




帰省した時にしか口にすることが出来ないし、わざわざ買って持って帰るには面倒だし重い。




今年に至っては 珍しく仕事が忙しくて、帰省出来なかったから、この状況は 私にとってまさに願ったり叶ったりなわけで･････




「……。」




･･･彼の誘いに乗ってよかった！




なんて、心の中でガッツポーズをする。




『おつまみ何がいい？』




「え…っと、任せるよ。」




『了解！』




「……。」




･････あれ？




でも待って、なんでここにあるの？




オークションサイトで買ったものなら、一度人の手に渡ってるから嫌なんだけど･･･




『さっきコンビニで買ったやつしかないんだけど、Aはお菓子とか食べる？』




「…普段はあんまり食べないけど、」




『エビせん好き？』




コクリと頷くと、嬉しそうに封を開けるニカに なんとなく母性のようなものを感じる。




生意気だしうるさいけど、結局何をしても可愛いから仕方なく許しちゃう、みたいな･･･




弟がいたらこんな感じなんだろうか。




「あ…ねぇ、これさ、」




『うん？』




「…どこで買ったの？」




『え？普通に店で買ったけど。』




「……。」




店･･･って、福島だよね。




『俺ソーダ割り。Aは？』




「え？」




『水割り？ロック？』




「んー…ニカと同じで、」




『ん、おっけ。』




ホントはロック派だけど、今日は無理。




ロックなんか、絶対1杯で酔っちゃう。




「ねぇ、どこ出身？」




『東京だよ、なんで？』




キョトンとした表情を浮かべるニカ。




「だってこれ…」




『これ？福島で買ったけど。』




「…旅行？」




『あー…まぁ、そんな感じ。』




福島に旅行って･･･




見かけによらず 自然が好きなのかな？




どっちかというと、ニカの見た目はどこからどう見ても都会人って感じなんだけど。

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