Torenia Fournieri -2-

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『そんな理由で通ると思ってんの？』




「は？」




『……じゃあ俺も、離したくないから離さない。離したら逃げちゃうんでしょ？』




「な…っ、」




『ふはっ、お互い様じゃん (笑)』




「一緒にしないで。」




『お酒好きでしょ？』




「……今そんな話してない、」




『いいからいいから ♪』




･･･噛み合わない。




お酒呑んだら このイライラも少しはマシになるかもしれない、なんて思い始める私。




もう私が抵抗しないと分かったのか、腕を掴んでいた手をすんなりと離して 笑顔を見せた。




『名前なんていうの？』




「……A、」




『ふーん、Aね！』




･････呼び捨てか。




突っ込むのも面倒だから 別にいいけど。




「…そっちは？」




『……。』




「……え？何、名乗らないつもり？」




いくらなんでも失礼すぎるでしょ･･･




『ニカ、って呼んで。』




「…ニカ？」




『うん。』




「……それって、名前？」




『……。』




「…ニカね、分かった。」




･･･まぁいい。




聞かれたから聞いただけだもん。




これから宜しくってわけでもないし、それなら私も本名なんて言わなきゃよかったな。




『そっち座ってて？』




「…うん、」




言われた通り ソファーの向こうにある椅子に腰掛けると、ニカはキッチンへと向かった。




･････広いなぁ、この部屋。




ここに1人で泊まってるわけ？




私は友達の付き添いで来たから、1泊するのにいくらかかるかなんて知らないけど。




ここ、一体 何平米あるんだろう。




隣同士だからほぼほぼ同じ造りだし･･･




「……まさか、」




ああ見えて、実はどこかの若社長とか？




･･･いや、それは絶対ないな。




『ねぇ！Aって日本酒好き？』




「え？……好きだけど、」




『普段は何呑むの？』




「……日本酒か、焼酎かな。」




今日はたまたま、フレンチレストランでディナー、夜はバーでカクテルとワインだったけど･･･




普段の私は、洋食よりも和食派だし、カクテルや甘いワインより日本酒や焼酎が好き。




ニカもそうなのかな？




変なとこで気が合うんだね。




この状況といい、今からまたお酒を呑もうとしている自分といい、冷静になってみると自分の行動全てに呆れしか湧いてこないけど･･･




なるようになればいい、なんて思ってる自分は、きっとまだ酔っているんだと思う。

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